グリーフ当事者研究S4-2 Sketchnote
前回の研究の最後に、一人の研究メンバーがある疑問を投げ掛けてくれました。
ずっと入院していた重たい障害や病気を持つ子どもと漸く一緒にお家で過ごせることになった。
看護師さんは、お風呂の入れ方、家族と一緒に楽しいお出かけ、日々の過ごし方について想像させてくれた。
先生(医者)は、病状の説明をしてくれて、どれだけの時間があるかを話してくれた。
・・先生はいつもだれよりも苦しそうな顔をしている。
医療者側へのケアはあるんだろうか。死に向かう話をすることを先生はどう感じているんだろう。
その疑問を受けて、今回は、近しい人を亡くした当事者研究者とともに、NICU(新生児集中治療室)の医師、臨床工学技士、在宅医、在宅看護師、社会福祉士などの医療側当事者も交えて研究を進めることになりました。
まずは、死を告げられた側(家族、いずれも小児)からのエピソードを紹介します。
看取った病院の先生に
「助けられなくてごめんねって言われた。すごく、色々なことを考えた。」
在宅で必死で蘇生しながら電話で先生を呼んだ
「その時の記憶が衝撃的過ぎて、その後の死亡宣告などは霧の中。記憶が曖昧。」
在宅で息を引き取った
「明るかった記憶。家族も、在宅の先生や訪問看護師さん達もきて、よく頑張ったね、何を着せようねと話していた。」
一方、新生児や小児の死を告げるとき、あるいは死に向かう病を告げる医師からのエピソードです。
「死について、また死に向かっていることについて家族に語る際に、自分は泣かずに話せたことはない」
それは、その子に対する思いもあるけれど、何よりも目の前にいる父母を思って。
「もっと、家で一緒にすごさせてあげたかった。」
それがくやしい。治療方針の決定を下すのは自分。そのときは自分の気持ちに素直に、家族と一緒に泣く。
看護師
「医療者というよりも、自分自身が母の立場で、こどものぬくもりを失うことの辛さを想像して勝手にとても辛くなる。本人たちに確認したわけではないのだけれど。。」
でも、だからこそ、生きているときに今できることをやれるように支援してきた。
それで、死を告げる側の医療者に対するケアって、どうなっているの?
「病棟に(患者さんのために)勤務している歴代の臨床心理士が仲良くしてくれる。一番やばいのは医師だよと引き継がれていてケアしてくれているのかもしれない笑」
「その子から教えてもらったこと、反省は残って次に活かす、性格的に辛かった気持ちは切り替えられる」
「患者さんの苦しみ、患者さんの苦しみになにも出来ない自分の苦しみ、病気についての患者さんとの会話がそれでよかったのかどうか、迷うことも多い。先輩看護師に言われた『一番悲しいのは家族なんだよ』『次の患者さんがいるんだから泣いているんじゃない』という言葉は辛かった。今は大分話す場や話していいという雰囲気があるように思う」
また、患者さんやご家族と直接関わりながらも、看取りの場にはほぼほぼ加わることのない、コメディカルいう役割の人たちからの体験も語られました。
「立ち会えない。自分もその時に院内にいたのに、会えない。いつまでも終らない感覚」
不完全燃焼を次の関わりに活かそうとしている。
「その子に会いたかった。家族と同じ時間を共有したかった。でも役に立たない。」
グリーフ活動の原動力になっている。
システマティックな「ケア」はなかなかなくても、お互いがお互いの心について、また自分自身が人間であっていい、という考え方が少しずつ浸透してきているような気配がありました。
なによりも、ひとたび看取ってしまうとなかなかお会いできないけれど、患者さん家族も医療者を人として気にしていること、みなさんも知っていただきたいです。
考えてみると、通常「予後の宣告」は家族とともに本人にされるもの。
ただ、本日集まったような新生児の先生はもちろん、心身ともに重度のお子さんを診る医師の先生方にとっては死や近しい死を「本人へ告げること」(かつ本人から認知的な反応を得られること)はとても稀なこと。本人と死について語る体験は、大切な経験になっているようです。
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これらのことを話し合った後の深い静寂とため息。
「死のことって、話すのにどうしてこんなにエネルギーがいるんだろう。」
近しい人の死を経験しているからこその言葉。
自身の死の捉え方、周りの人の死の捉え方。
死にゆく人を含めて、地域がどうケアしあっていけるのか。
そんなことを徒然に話しながら決まった次回のテーマは、
「何故死を語ることはかくも難しいのか」
次回は2023年11月15日(水)10:00~11:30 オンライン開催です。
我々全員が例外なく「死にゆく」当事者です。
次回はどなたでもご参加いただけます、ご参加希望の方はどうぞお気軽にお問い合わせください。
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『グリーフを抱える人の当事者研究』目的
①「身近な方との死別によるグリーフ」について、同じような体験をした仲間と集い、語り、聴き、共感し、語り直す機会とすること。
② それらを通じて感情や考えの整理をし、新たな意味づけをすること。
③「グリーフを抱える人」と共に生きるためのヒントを提供すること。
『グリーフを抱える人の当事者研究』実施テーマ一覧
Season1(2018年 5回)
第1回「喪失後の体調変化について」
第2回「宗教とグリーフの関係について」
第3回「社会的役割とグリーフについて」
第4回「グリーフと共に生きる。
グリーフと共に生きる人と生きる。」
第5回「これまでの振り返り」
Season2(2020年 1回)
第1回「最近の様子」
Season3(2021年 5回)
第1回「写真展に『会いに行く』」2021年4月22日(木)10:00-11:30
第2回「亡くなった方との関係性の変化」2021年5月27日(木)10:00-11:30
第3回「あの人を想い出させる〇〇」2021年7月30日(金)10:00-11:30
第4回「フラッシュバックの状況報告」2021年7月30日(金)10:00-11:30
第5回「グリーフを伝えること」2021年10月1日(金)10:00-11:30
Season4(2023年7月~現在開催中)
第1回「研究の研究の研究」2023年7月21日(金)10:30-12:00
第2回「死を告げるということ」2023年9月20日(火)10:30-12:00
予定 第3回「何故死を語ることはかくも難しいのか」2023年11月15日(水)10:00-11:30
【グリーフを抱える人の当事者研究についてのお問い合わせ・お申し込み】
医療法人稲生会 目黒
011-685-2799
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