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第54回みらいつくり映画同好会_開催報告

みらいつくり映画同好会を以下の通り開催しました。

【開催日時】
2022年10月27日(木)16:00〜17:00

【課題作品】
『コーダ あいのうた』

【参加人数】
11名(うちラジオ参加2名)

【報告】
第94回アカデミー賞にて、『コーダ』が作品賞をとり、話題になりました。
話題になっていた当時、みらいつくり映画同好会では、『コーダ』の原作となるフランスで公開された『エール』を課題作品としました。
「『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞にノミネート!!」なんて話題もあったせいか、Amazonプライムで『コーダ』を無料で鑑賞できるようになってからも、私は本作をなかなか観られずにいました。

 

みらいつくり大学では、「お手話べり」という、手話を使っておしゃべりをする活動を行なっています。
この活動には、手話が得意な「かなさん」が加わっていますが、かなさんは「先生」と呼ばれるのを嫌がりますし、「ただの手話好きです」と話しています。
最近「お手話べり」では、参加者は近況報告を手話で話せるように準備をして、互いに交流をしています。
私は、手話者でもありませんし、正式に手話を習ったこともありません。
なので、伝えたいことを元に手話を調べるものの見つけられず、どうしても、これなら伝わるかな?と考えながら、手話とは言えない「手話」で話をすることになってしまいます。おそらく他の参加者も近い状況になっています。
でも、
「〇〇さんってフィギアスケートが好きで羽生くんのファンだから…」とか、
「〇〇さんはこないだカメムシの話をしていたな…」とか、
そんな想像をしながら話を聞いていると、何かが伝わってくるのが不思議です。
そして、私の拙い「手話」も伝わっているような感覚になる時があります。
その時の感覚をなかなか言葉にできずにいたのですが、『コーダ』を観て、「もしかしたら」と一歩前へ進めたような気がしています。

 

私が『コーダ』を観ていて感動したのは、冒頭とラスト、それぞれに出てくる、兄妹が手話でやり取りをするシーンです。
冒頭、日本語では、
<じゃね ボケナス兄貴>
<じゃな プッツン娘>
「それいいじゃん」

ラストでは、
<じゃね クソ兄貴>
<またな アホ娘>
と訳されていました。

これらは、「兄妹だけで伝わる手話」というよりも、
「関係とともに創っていく言葉」といった方が適切であるように思います。
このシーンを観ていて、「お手話べり」で「手話が好き」と話すかなさんが楽しんでいるのは、このような言葉のあり方なのかもしれない、と思いました。

私は普段、何も考えずに日本語を使用しています。
まるで辞書に載っているような決まりきった「日本語」を使用しているかのように生活をしています。
この映画を観て、その「当たり前」が違っているのではないか、と思いました。

例えば、
週末、近所のスーパーで、妻は私に「ビール買う?」と言います。
この「ビール」は、もちろん日本語ですし、辞書にも意味は載っています。
でも、妻と私が使っている「ビール」は、「ノンアルコールビール」のことを指しています。
コロナ禍になって、すっかりお酒を飲まなくなった私は、時々、ノンアルコールビールを飲んでいるのです。

また、私の家には、1歳半の子どもがいます。
最近、息子は動物が大好きで、道路を歩いている犬を見つけては「わんわん!」と言います。
息子の「わんわん!」を聞いて、私も妻も、「わんわん!いるね」と話します。
私たちが息子より先に犬を見つけた時には「わんわん!いるよ」と教えてあげます。すると息子は犬を探します。
辞書的な「わんわん」ではなく(辞書に「わんわん」があるかわかりませんが)、その言い方が重要です。
友人にいただいた声の出る図鑑があるのですが、そこに載っている写真にペンを当てると、図鑑から「犬・ワンワン!」と音が出ます。
その図鑑から出る音に似せた「わんわん!」が我が家における「犬」を意味する言葉なのです。

映画の話に戻ります。
この映画の冒頭とラスト、兄妹が「言葉」を「創る」シーンを観て、「お手話べり」での経験と私の普段の生活がつながったような感覚になりました。

私たちは「言葉」を創って生活しているのではないか、
その楽しさが「お手話べり」に参加する時にある感覚なのではないか、
たとえ、なんらかの障害があって「日本語」でコミュニケーションができなくても、ともに「言葉」を「創る」ことができるのではないか、
「日本語」でコミュニケーションができていても、「言葉」を「創る」ことができない場面がありうるのではないか、
そんなことを考えました。

とっても楽しい映画鑑賞の時間を過ごしました。
ということで、私は以下の星をつけました。

観て参加した人たちのお名前と、つけた星を公開します。
松井…星5
和田さん…星4
透さん…星5
安藤さん…星4
宮田さん…星4
松原さん…星4.5
土畠(な)さん…星4
土畠(と)さん…星3.5

ということで、今回の課題作品『コーダ あいのうた』の星は…
星4.25です。
平均して高評価です。

終盤になってラジオ参加してくださった方から
「来年高校を卒業するのですが、観ておいた方が良い映画はありますか?」とチャットで投げかけがありました。
こんな嬉しい質問に、私を含め参加者一同あたふたとしてしまいました。
「高校生のうちに見ておくべき映画」…今後のテーマになりそうです。

次回の課題作品は『ドライブ・マイ・カー』。
同時期に話題になっていた映画です。
ぜひどなたもご参加ください。