Works

作品No.005_しさくの広場2021春

時計の針

 

真っ白な壁に丸い掛け時計。
僕は時計を見る。
時計の針は2分ずれていることを僕は知っている。

時計を見る。
針は5分ずれている。
僕は知っている。

時が経ち、時計の針は10分もずれた。

10分もずれた時計を、見つめる僕。

僕の心は張り詰めている。

誰かが時計を壁から外した。

誰かが僕の目を見つめ、優しく語りかけた。

僕の目から、涙が溢れ出る。

潤んだ目で見上げる時計の針は、
本当の時間を刻んでいる。

 

(作.蟹座のホープ)

 


week2交流週

・蟹座のホープさん、いつも楽しく読ませて頂いてます。自分は知っている。でも、自分では戻せない。誰かに気づいてほしい。でも言えない。いや、言いたくない、誰かに気づいてほしい。誰かが気づいてくれたとき、それも優しく気づいてくれたとき、涙が溢れ出るほど嬉しかったのでしょうね。「本当の時間」というのは、「ずれていないこと」や「ずれないこと」ではなく、「ずれていても誰かが気づいて直してくれること」なのかもしれないと思いました。
・針がずれた時計、わたしは少し好きです。みんなと違う時間を生きている気がして、少し楽しくなります。
・「本当の時間」って何だろうと考えました。あくまで「時計」は「時間」をあらわすもので、その「時計」があっているとは限りません。「世界標準時」なんて言葉を中学校の時に習いましたが、結局は「時間」も人が決めたものなんでしょうか。何だか納得いかないような、もうちょっと考えてみたいような気分になりました。

week3推敲週