Works

第22回みらいつくり読書会 開催報告

みらいつくり大学校企画
第22回みらいつくり読書会@zoom

【課題図書】
ジョセフ・コンラッド『闇の奧』

【実施日時】
2021/3/1 16:00〜17:00

【参加者】
A,B,C,D,E(+ラジオ参加2名) 全7名

【内容】

A:今日の課題図書は『闇の奧』でしたね。みなさん読めたでしょうか。
B:はい。
C:Bさん読めた?
B:なんかね…。
C:なんなのー。
B:途中で…。札幌市の図書館からかりてきて、読んでもらうやつで…。でも途中で気持ち悪くなっちゃって。どうなんでしょうか。
C:耳で聴くと余計に気持ち悪いのかな。
B:気持ち悪かったです。足にしたたる何かが…それが血だったりとか。あとは…。
C:それってBGMはついているんですか?
B:ついてはいないんです。
C:ただ淡々と読んでいるの?
B:ただ、アンドロイドっぽい声で読むので、「ナマクビガ…」とか言うんです。「アシニシタタル、ナマアタタカイモノガ…」っていう感じ。明るいのかなと思ったら気持ち悪かった。
C:そうなんだ。あー。
A:今日はFさんがきてくださっている時に限って『闇の奧』っていうのが、読書会っぽい…。
C:ははは。
B:申し訳ない感じ。
C:でも名作ですから。
A:名作なのは間違いないですね。
C:みんな同じ(訳書を読んだん)ですかね?Dさんもこれですか?
D:僕もそうですね。
C:古典新訳文庫ね。光文社がいいのかはわからない…。
A:そうですね。
C:もしかしたら岩波にした方が良かったのではないかと今回思ってしまいました。
A:私もそれを何回か考えながら読みました。前回、CさんとDさんの言っていた「早くあとがき読みたい」っていう気持ちが少しわかった気がします。
D:ふふふ。
C:ははは。妻も昨日一応読んでいました。真ん中の、怖い描写のところはすっ飛ばし、クルツが出てきたあたりから最後まで読んでいました。
B:最後どうなるんですか?
C:最後は、どうなるというか、婚約者が出てくるんですよね。クルツの。
B:ふーん。
C:で、マーロウがクルツのことを婚約者に語るんだけど、嘘をつくんです。
B:ふーん。
C:婚約者のことを思ってというか。みたいなので終わるんです。
B:それで終わる…。
C:不思議な、というか…あの終わり方はいいなと私は思いました。Aくんが時系列でまとめてくれているのかな…?
A:いえいえ。大事な登場人物を二人あげるとしたら、マーロウとクルツかな、と。
C:はいはい。
A:マーロウがイギリスで語っているんです。私は読んでいて「はいはい、イギリス文学の感じね…」と思いました。誰かが誰かに語っている風から始まっていく。イギリス人じゃないですよね。他の文化を取り入れつつ、と聞いていたんですが、読み始めると「セリフ調が長いな…」ってドキドキしながらいました。
C:あー。
A:まあ、そのマーロウが語っているようになっています。そのマーロウ自身がアフリカ、コンゴの奥地に行って経験したことや帰ってきてクルツの婚約者に会った出来事とかを、記述しているっていう構造になっていますよね。
C:この手法って「枠物語」って言って、コンラッドが考えたんだって。
D:へー。
C:コンラッドが初らしいよ。
B:へー。
C:確かに、無い。『ガリヴァー旅行記』とか、あれは自分が報告している体ですよね。
A:はいはい。
C:それを聞いている別な誰かがいるわけじゃない。
D:はいはい。
C:確かにあまり無いよね。
A:それを『枠物語』って言うんですか。
C:なんだって。
A:へ〜。
C:コンラッドが開発した手法なんだって。
D:ふ〜ん。
C:そりゃすごいやって。
A:そうですね。
C:今だと結構あるよね。
B:うーん。
D:うんうん。
C:それで、多層性を出しているんだって。語られている人がいて、語っている人がいて、語っている人の過去がいて、聞いている人がいて、それを読んでいる僕らがいるじゃないですか。
A:はいはい。
C:そこで何度も何度も解釈することになるから。
D:うんうん。
C:そこで解釈がズレているということを表現しているんだって。なるほど、と思いました。
D:うんうん。
C:でも確かに読んでいるときはカギカッコ長いな…って。
A:ふふふ。
C:ずっとカギカッコだなって思っちゃったけど。
A:最初、イギリスということがどれだけ影響しているのかはわからないけれど、たとえが素敵だなと思いつつ読み始めました。自然の描写とかものの描き方がいいなと思っていたら、そのまま怖い描写に移っていったので大変でした。
A:まあ、全体の構造としてはそんな感じですかね。どんどん感想を話していきましょう。Bさん、「血が足に」っていうところは、中盤くらいかなと思うんですが…。
B:そうなんですよね。電子書籍の難点はどこまで読んだかわからないっていう。
C:そっか。
B:そうなんです。だからあらすじを汲み取って、色々なあらすじやネタバレを読んで。この話はそういう話なんだっていうので。
C:この本は相当薄いじゃん。これで1ヶ月読めなかったら…。読めるでしょ。Bさんのためもあって1ヶ月空けたのに。
B:いやいや。ごめんなさい。でもね、なんか、男の人大丈夫かもしれないけれど、女の人にとっては…。
C:まあいいや、Eさんの感想も聴きつつ…。
B:聞いてください。だって切ったりとか…。
A:その二分法はかなり強引ですよね。
C:そうそう。
D:うーん。
A:男の人はいけるけど、女の人は無理っていうのは。
C:うん、人によると思う。
B:もうちょっと綺麗なのがいいなと思います。
A:では、Bさんも途中でも、途中まで読んで思い出したこととか。Bさんの深層心理には『闇の奧』が聴かれているはずですから、音で。思い出したら言ってください。
B:唯一思ったのが…『地獄の黙示録』は観ようと思いました。
C:あー。
D:うーん。
B:『地獄の黙示録』っていうベトナム戦争を扱った戦争映画です。どうしてもインターネットで調べていくとこの本と繋がっていくんです。『闇の奧』と『地獄の黙示録』が。
D:へ〜。
C:そっちの方が有名だよね。それのネタ本ということで有名なんじゃないかな。きっとね。
D:そうなんだ。
B:そうなんですって。
D:へ〜。
B:それだけは観ようかなって。好き嫌いではなくて知識として。そう思いました。
C:Eさんは…(チャットを読んで)、購入したオーディオファイルが消えるってあるの?
A:ふふふ。闇の奥にね。消えて。
B:へへ。
C:闇の奥に…。消えた。
A:私は、読んで、不思議な話だなと思いました。光文社が良いのか悪いのか、さっきCさんが言っていましたが、私としては結構リズム良く読めたかなと思っています。『闇の奧』というタイトルの通り、「闇」がテーマなんだろうなと思いました。「闇」と比較されるのは当然「光」です。最初の方に、「この河からは光が出発していった」と書いてあります。イギリスから外に出ていく人たちを「光」というように表現しています。そういう白人…ちょっとくくりが大きいかもしれませんが、白人を「光」、文化も含めて「光」として、アフリカにある文化を「闇」とするところから始まっている。一見そういうようにして始まっていくんだけど、ヨーロッパにある「光」、アフリカにある「闇」という構造が崩れていく。むしろ、そこにある、アフリカに行ったときにクルツは狂っていくわけです。それは、アフリカにいる人たちがとか、黒人の文化がとかいうわけではなくて、元々、人の奥にある「闇」が影響していく。そういうことを言っているのかなと思いました。最初に、会社で出会うお医者さんが、頭蓋骨を計測して、「頭の中で変化は起きるんだ」と話します。そのことも、今言ったことを暗示、予示しているのかなと思いました。いつも私は、「何を批判しようとして書いたのか」っていうように考えながら読みます。今回は、普通に読むと、「帝国主義の批判」。でも、あとがきを読むと、必ずしもそれだけではないだろう、と。それをさらに超えて「我が心にある帝国主義」を批判しようとしたとありました。いわゆる一般的な「帝国主義」ではなく、私たちの心の奥にも帝国主義というものがあるんだ、というように批判したかったんだと書いてありました。なので、それは確かにそうかなと思いました。『闇の奧』が課題図書に決まって、たまたまその時に村上春樹のエッセイを読んでいたんです。そうしたら「コンラッドの『闇の奧』のように」って比喩が使われていたんです。
D:ふーん。それはなんのエッセイ?
A:『雑文集』っていう。
D:へ〜。
A:その中の、『アンダーグラウンド』について触れた文章でした。
D:へ〜。
A:「東京のブラックマジック」…だったかな。
C:なんか、コンラッド読みとして有名なんだって。村上春樹って。
D:そうなの。
A:かなり影響を受けているんだなって思いました。
C:『羊をめぐる冒険』って、『闇の奧』から影響を受けた作品なんだって。
D:へ〜。そう。
A:あと、私は今、濱ちゃんという…。いますよね。
C:苫小牧のね。
A:そう。濱ちゃん。
D:ふふふ。
A:「濱ちゃん」って何人もいるかもしれないけれど。
D:ダウンタウンの流れでないことは大体わかったけれど。
C:ははは。
A:そんな友人がいるんですけど。
D:村上春樹が大好きだもんね。
A:そうそう。
C:宮沢賢治とね。
A:村上春樹をさかんに勧めてくれるわけです。でも私はあまり村上春樹の小説が得意ではなかったんです。エッセイはすごく楽しいと思っていたんだけど。
C:村上春樹をね?
A:そうそう。
C:コンラッドを勧めてきたんじゃなく。
A:そう。それで、村上春樹も小説もちょうど読み始めたところだったんです。
C:今まで読んでなかったんだ。
A:『ノルウェイの森』を読んで、前半で挫折しちゃたんです。
C:あれはね…ちょっと。
B:あー。
A:今回、それを言ったら、濱ちゃんが「一番ダメなやつから読みましたね」って。
C:濱ちゃん的には何から読めばいいって言っているの?
A:それが、『世界の終わりと…』
C:『…ハードボイルド・ワンダーランド』。
D:あ〜。
C:あ〜。あれはすごいですよね。
A:それで読み始めたら、まあ面白くて。まだ読んでいる最中なんですけど。あまり先のことは言わないで欲しいんだけど。最初、ビルの中に入って、色々な人たちに会っていくんです。そこと、今回のコンラッド『闇の奧』が似ているんじゃないかなと思ったんです。
C:だから、物語の重層性とかって…、村上春樹はたいていサブワールドというかパラレルワールドがあるじゃないですか。そこは共通しているのかもしれないですね。
D:うんうん。
A:最初に受付の人が二人いて、その後にお医者さんがいて。そこで暗示されて物語が進んでいく、といったような始まり方。調べてみると『羊をめぐる冒険』は明らかにコンラッドの影響を受けているとありましたが、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』も私としては影響を色濃く受けていると思いながら読んでいます。とりあえずそんな感じです。
C:ちなみに僕のおすすめは『海辺のカフカ』です。
A:あ〜。
D:あー面白いね。
C:あれが一番好きですね
A:『オイディプス王』ですよね。
C:そうそう。
D:僕は『ねじまき鳥クロニクル』が一番好きです。
C:はいはい。
B:へ〜。
D:ノモンハンの皮を剥くところとか。
C:聖絶ね。すごいシーンですね。
D:おかしいんだね、多分。自分は。皮を剥くところが好き、というか。
C:後半、最近のやつがあまり好きじゃなくなってきたんだけど。
D:うーん。僕は『1Q84』は相当好きですよ。
C:本当。そっか。
D:一番か二番くらいに。面白かったです。
C:『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』もね。
D:ああ、うんうん。
C:そんなに嫌いじゃなかったけど。
D:はいはい。
A:最近、寝る前には、村上春樹を読んでいて。楽しいです。いつか静かなところに村上春樹だけKindleだけを持って行きたいなと思っています。
D:中毒性あるよね。
A:あの、後半、コンラッドの話じゃなかったように思いますが。
C:ははは。
D:なるほどね。
A:どうでしょうか。今日は読んでいるのがおそらく3人かなと。Dさんどうですか?
D:僕はね、そんなにちゃんとは読めていなくて。目を通したくらいの読み方をしていて。結構、文章が自分に合わなくて、今何が起きているのかを把握できていなかったと思うんです。今、どこにいるの、みたいなことが。今、船の上なの?事務所なの?みたいな。どこで誰が何を喋っているの?というような感じ。なんか把握しずらくて、ずっとなんだか悪い夢を見ているような感じでした。そんな感覚でしたね。で、あとがきで、答え合わせをするみたいな感じ。クルツという人が象牙に取り憑かれていて、そのクルツに、主人公が崇拝じゃないけれど憧れというか帰依しているじゃないですか。その感じがあれに似ていると思いました。『白鯨』です。メルヴィルの。
C:おー。
A:メルヴィル。
D:僕は『白鯨』を読んでいて。『白鯨』のエイハブ船長が…なんとかディックっていうすごい鯨がいるんですよね。すごい鯨がいて、多くの船乗りが殺されていて。エイハブ船長はそれに足を奪われている。モビーディック、その鯨を倒すことに魂を完全に明け渡している。いっちゃっている。そのエイハブ船長を見る、主人公の船乗りの話なんです。物語の構造はすごく似ていると思いました。メルヴィルがこちらを真似したのかって思うくらい。時期的にどうなんでしょうか。1902年…メルヴィルの方が早いか…。
A:私も読んだんだよな…。
C:早いんだ…。
D:メルヴィルってペリーの時なんですよね。アメリカが鯨の油を取ることでお金を稼いでいる時期があって、その時に横須賀、日本に開港を迫ったじゃないですか。あれって、捕鯨船の給油をしたかったんです。だから、エイハブ船長のために、実は、ペリーは日本に開国を迫ったんです。だから、あれは1860年とかそのくらいでしょ?年代としてはメルヴィルの方が古くなるんだよね。
C:1851年だって。
B:うん。
C:同じくらいだね。
A:ちょっと前か。
C:明治維新のちょっと前ってことだよね。
D:ということは、(コンラッドと比べると)メルヴィルの方が古い。どっちかがどっちかに影響を与えたんじゃないかってくらい似ている。その話の話型が。何かに取り憑かれた男、それを見る主人公、という。それがすごく。解説者はドン・キホーテとサンチュの関係に似ているといっていました。だとしたら、一種の古典的な話法なのかもしれません。取り憑かれた男を見る感じ。今それを思えば、確かに村上春樹の物語って、取り憑かれた男を、追いかけるというか、そういう感じがありますよね。どの話にも取り憑かれたやつが出てくる。なんだったかな。金持ちで、スポーツカーで水に飛び込むやつとか。いかれたやつが出てくる、村上春樹の物語には。その人を主人公は「彼はいつ失われてしまったのか」と言う。「失われてしまった」んです。
C:村上春樹はとことんそれだからね。
D:「僕はパスタを茹でながら失われた彼について考える」んですよ。
C:そして体を鍛えたりする。
A:ビールを飲む。
C:筋トレしたりする。暗闇の中で。
D:飲みかけのビールをシンクに捨てるんです。
B:えー。
A:「もったいなーい」じゃないですよ。
C:はっはは。村上春樹を読んでいるとなんなの、ってなる。
D:「パスタを茹でながら、失われた友達にについて考えがち」っていうね。
B:女々しい。
A:女々しいって。
D:エイハブ船長みたいなことなんだよね。村上春樹にとって。クルツのようなものというか。あとは、コロニアリズム。植民地主義の周りで話題になった本だと解説で読んで。それでいうと、あれに似ていると思ったんです。『アラビアのロレンス』に似ていると思ったんです。
C:ふーん。
D:異国の土に…最後主人公は狂っちゃうんですよね。異国の植民地にいくことで現地の人たちに触れ、最後イギリス軍の人が狂う。それでいうと『アラビアのロレンス』に似ていると思いました。はい。そんな感じです。今のところ。
C:僕は、Dくんと同じ感想で。わからなかった。情景が浮かばなかった。だからこそ、光文社古典新訳文庫のせいにしちゃっていた。最後まで読んだんだけど、そもそもクルツがどこで出てきたのかわからず。マーロウがクルツと会っているのか会っていないのかがわからなくて。
A:うんうん。
C:「なんなんだろう」と全部読み終えて。短いけれど、いまいちだったなと思った。さっき、Aくんが言っていた、「アフリカの闇に入っていく」というのと「自分の精神の闇に入っていく」というのの掛け合わせの面白さは、「なるほどね」と思ったけれど、わからなくて。いまいちわかりずらい小説だなと思っていたんだけど…、松岡正剛さんっているじゃないですか。
A:千夜千冊ですね。
C:この人が、「方法文学」というのをまとめています。いわゆる、文学の中で、新たな方法を導入した作品を取り上げて、書いている。それの解説で、それはわざとだと。コンラッドがわからないように書いているのは。さっきDさんが「悪い夢を見ているような」というのは、そういうふうに読ませようとして書いているらしいんです。
D:なるほどね。
C:だから、ここにも書いているけど、そもそもマーロウがクルツに会っているかがちゃんと読んでも判然としないんだって。っていうことと、さっき言った「枠物語」で書いている、物語の中にいる人が物語っていて、でも自分の昔の話をしている、っていうような多層性。そもそも、それが真実かどうかわからなくしている。あえて。みたいなことを徐々に知って、「ああそうか」と。だからこそこれだけ世界的に。モダニズム小説の代表作と言われているというようなものを読んで、そうだと思った。あとはちょうど、昨晩『地獄の黙示録』を観たんです。
D:うん。
C:全然舞台は違うんです。コンゴから、ベトナムになっている。イギリスから行くのではなくアメリカから行っている。象牙を取っているのではなくて、いわゆる戦争で行っている。なんだけど、クルツは「カーツ大佐」という名前になっている。
D:おーもう完全に。
A:そのままですね。
C:主人公が、そのカーツ大佐を殺すっていう任務を受けて、軍人として行くわけです。だけど、同じように川を上っていって、カーツ大佐がいるところに行くんだけど、そのプロセスで、Dさんが言ったように、周りでおかしな人がいっぱい出てくる。アメリカにいれば普通の人だったんだけど、戦争という場に行って、人間の異常性みたいなものが出まくる。ベトナムの村を空爆して、ボコボコにしている横で、サーフィンしようとしている隊長がいるんです。「あの波はすごいぞ!」って。絶対に自分は弾に当たらないと信じている。すぐ近くで爆弾が落ちても絶対に動かない。そして「あの波だ!」と言っているわけです。とか。ベトナムの人たちを野蛮だというアメリカ兵の方がいかに野蛮かということがよくわかる、という建て付けにしている。クライマックスは全然別の話なんだけど、所々、やはり『闇の奧』と同じ仕組みにしている。それが、別のところで話していた『めぐりあう時間たち』という映画もそうなんだけど、そういう表現の仕方って面白いなって思います。他の人がやったものをそのまま作品・脚本化するのではなくて、全然違う話にするんだけど共通点があるというような。最近出ていたブラッド・ピットの『アド・アストラ』という映画…。
B:宇宙の!見たいと思っていました。
C:そうそう。
D:知らない…。
C:あれも『闇の奧』なんだって。
B:え!
C:そうそう。
D:ふーん。
C:『闇の奧』を、宇宙を舞台にしてやったやつで。実はスタンリー・キューブリックが元々『闇の奧』を映像化しようと思ったんだけど、お金がかかりすぎてできない、それで、『2001年宇宙の旅』の最後で、『闇の奧』のエピソード的なものを入れた。(『闇の奧』に)それだけ表現者を惹きつける何かがあるっていうのは、まだわからないけれど、シェイクスピアの時と同じで、ものを読んだ時は全然「すごい!」ってならないけど、そこに巻き込まれていった人たちの巻き込まれ方を見ていると、なんかすごいんだろうなっていう。なんだろう。まだ奥が僕には見えていない…。っていう感じだと思いました。
A:私も帝国主義の批判というだけでは、違う様な気がするんですけど…。
C:アフリカのアチェべっていうノーベル賞作家だったかな…がいるんですけど、その人はナイジェリア出身なんです。その人からボロクソに言われているんだって。「これこそが植民地主義でしょ」って。
D:はいはい。
A:あー。
C:「全然こいつはわかっていない」って批判しまくっている人もいれば、あえてそういうものを明るみに出すっていう凄さがあるっていう人もいれば。
A:そうですよね…。難しい。今、私たちはイギリス文学からアフリカ文学に行こうとしているじゃないですか。マジック・リアリズムに向かっている。今まではなんとなくこう語ってくるだろうなと感じていたイギリス文学から、慣れない作法のアフリカ文学に行こうとしている。そんなことを考えると、今回の作品の選定としては本当に素晴らしいなと思っていました。
C:でも、『やし酒飲み』…んじゃったから…。飲んだって言いそうになっちゃった。読んじゃったから。『やし酒飲み』を読むとさらに…。そもそもマジック・リアリズムと言っていること自体が、そうやって見ている側の意見でしょ。多分、アチェべが批判したのはそういうこと。あなた方は「野蛮だ」とか「おかしい」とかいうようなことを言うけれど、それは内在的には見れていない、というわけです。『やし酒飲み』のチュツオーラも、おかしなことを書いているとは思っていないわけです。文体とかもめちゃめちゃなんだけど、彼の中の文化では普通なのかもしれない。
D:うんうん。
A:さっき、クルツがいつ出てきたのかわからないという話、私も思っていました。最初、幽霊に会ったんだと話だしますよね。本人に会う前から。急にフィクション感が強くなったと思いながら読んでいったら、色々な幽霊…。
C:でも最初は死んでいないんだよね。
A:そう、最初は死んでいない。多層性の話じゃないけれど、語って思い出しているから、「あの時幽霊が…」って言い出すんです。
C:そして声の響き方とかが普通じゃないんですよね。
A:うんうん。
C:それが『地獄の黙示録』ですごい表現になっています。まさに。文章をこうやって表現したらこうなるんだと思いました。結局、死んだシーンは出ていないけれど、でも最後の言葉は聞けているんですよね。
A:一応、死んだというか…。
C:でも、死んだ時に、「クルツが死んだ」と言われるじゃない。でもマーロウはあたかも死ぬ間際の言葉を聞いたかのように書いている。
A:確かに…。
C:でも死に際の横にいたわけじゃないと思うんだよね…。
A:光文社の171ページだと思うんだけど、その辺りが微妙なんですよね。
C:うん。そうなの。
A:完全に曖昧なのかと思いきや、そうでもない。「おそろしい、おそろしい」って聞いて…。
C:最後さ、「おそろしい、おそろしい…」って聞いたの?
A:一応、聞いてから、蝋燭を消して船室を出たって書いてあります。
C:あー。したら看取っているのか…。この人。マーロウは。
A:看取っているか…わからないんです。
C:はは。
A:そして蝋燭を消すっていう仕草も、煙に巻くじゃないけれど、現実と幻とが…。
C:あー。
B:なんで「おそろしい」って言っているんですか?
C:それがわかんないのさ。
D:うん。
B:何が恐ろしいとかは言っていない?
C:何を見て何を恐ろしいと言っているのかはわからない。
A:多分これまで多くの人たちがずっと考えてきたことだと思います。でも、それについて、婚約者が「最後はなんて言ったんですか?」と聞いて、その時にマーロウは「あなたのことを最後に言っていました」と伝える。
C:婚約者のことをね。
B:めちゃ嘘じゃないですか。
C:でも、そう言わざるを得なかった。最後にこんなことを言って死んだとは言えなかった。恐ろしくて。
A:婚約者にとっては…。
C:クルツを狂わせた何かがあるんですよね。それがわからない。
A:婚約者にとっては、クルツは狂っていないので、清くて美しい人として残っている。そう思っているんです。ずっと喪服を着て、クルツが死んだことをずっと悲しんでいる。「今でも愛しています」と言っている人に対して、「『おそろしい、おそろしい』と言いました」とは伝えられなかった。「あなたの名前を言いました」と伝えたんです。
D:なんか、『グレート・ギャッツビー』と似ているよね。そういう意味では。
C:あー。その人がどんな人かわからないというか、いろんな評価があるというか。
D:そうそうそう。だから、フィッツジェラルドでしょ。村上春樹が一番好きな作品って『グレート・ギャッツビー』なんだよね。色々なところで言っていて。で、村上春樹ってなんだか『グレート・ギャツビー』を書きたい節がある。
A:へ〜。
D:ギャツビーという超大金持ちが、虚栄というか…、愛する女性がいて、その人に認められようとして浪費をしていく。自分を富によって滅ぼしていく。その親友であるところの主人公が「あいつは純粋だった」と最後に思うんです。で、恋人にそれをいうのかな…。という意味では完全に同じ話ですね。
C:『グレート・ギャツビー』の方が後?
B:ディカプリオが主演しているんですね。
D:そうそう。『グレート・ギャツビー』の方が後じゃないですか。
C:だよね。多分。
D:そうですね。すごい似ている話だと思いました。
C:現地の人たちも、クルツをよく評価しているというか、崇めているんですよね。
A:神様みたいに。
C:そうそう、でも、現地の人を見せしめに殺して、生首を骸骨をぼっこの上に立てている。それを家の周りに並べたりしている。なんなんでしょうね。
D:うんうん。
C:マーロウ本人も途中からその魅力にひかれて行きます。
A:そうそう。だから、嫌いじゃないんです。むしろ憧れている。
C:だから、資本主義批判みたいなものも入っているって書いている人もいますよね。いわゆる蓄積というか、次から次へと欲しくなっていくというか。それにマーロウも絡みとられていったわけじゃないですか。そういう、いわゆる貨幣の物神性じゃないけれど。マルクス的に言うと。フェティシズムというか。どこまでもそれを追求するようになってしまうことの怖さというか。みたいなことを指して、クルツが「おそろしい、おそろしい」と言ったのだろうか…。なんなんでしょうね。
A:解説には、「魔境」っていう表現について書いていませんでしたか。
C:うーん。
A:魔境が狂わせるっていうか。
C:奥地ってことね。でもその奥地というのが、アフリカのコンゴの奥地っていう意味と、人間の精神の奥地っていう意味を二重にかけていますよね。
A:はいはい、そうです。
C:人間誰しも、そういう精神の奥底があるんだっていうことの怖さっていうか。
A:はい。訳者のあとがきの方には、「実存的な恐怖」ってありましたね。「宙吊りになっていることを意識した時の実存的恐怖」だって。
C:うーん。
A:そう言ってしまうと、なんか…。もうちょっと別なことがありそうだけど。
B:でも、クルツって現地の人から崇め奉られて、自分の思い通りだったはずです。それなのに自分の精神が崩壊するような出来事ってなんなんだろうって。
C:それがわからないんですよ。
B:あーそうなんですね。
C:うん。でも主人公が、もしかしたらクルツもそうだったのではないかというプロセスを辿っていくわけです。
B:うーん。
C:河を遡っていくのとあわせて。
D:そうだね。
C:だから主人公だって、クルツみたいになる可能性があって。
D:なるほどね。
C:映画の方は圧倒的にそういう描き方をしていて。最後、カーツ大佐に代わって、主人公が新たな神になることを象徴するシーンがある。ならないんだけど、そんなことを象徴するシーンがあって。人間は誰だって、精神の奥底を見るような事態にあったら、いわゆる戦争とかね。さっきAくんが言っていた「実存的な不安」というか自分の寄って立つ地盤がないというか、サルトル的にいうと「無」ですよね。みたいなことになった時に、人間はどうなるかわからないという話なんだと思う。だからクルツがもともと変な人で、だからそんな風になっちゃったとは言い切れない怖さなんだよね。
D:うん。それもあるよね。運命論じゃないけれど、状況が人をそうするというか。ギャッツビーもそうなんだよね。ギャッツビーのような…親戚が密造酒でめちゃくちゃ儲けているんです。ジャブジャブ金がある故に変になっちゃう。でも孤独にもなるし。でも主人公だけがその気持ちをお互いに分かち合ったと思っている人間でっていう筋書きなんだけど。環境が人間をつくるっていう、そして環境につくられた人間が時に狂うわけじゃないですか。そういうことなのかなとかね。
C:それを訳者は「魔境」って表現しているってことかね。
D:なのかね。狂気というか。なんか、片岡鶴太郎とかって、わけわからないじゃないですか。最近。
C:ヨガね。
D:内臓を剥がしているじゃないですか。
C:ふふふ。
B:ふふ。
D:あの人、もう朝起きてから家を出るまでに8時間かかるんだって。
A:はは。
B:えー。
D:朝ごはんを3時間かけて食べて。
A:フルーツね。
D:ヨガを5時間くらいやる。もう…。8時に家を出るために、12時くらいに起きるんだって。もう言っている意味がわからないでしょ。絶対になんか向こう側の世界にいっちゃってるじゃん。
A:うんうん。
D:クルツってそういうことなのかなって。
C:クルツかー。
D:でもカリスマ性はあるじゃないですか。
A:あります?
C:「クルツ鶴太郎説」。
D:でも、ああはなりたくないでしょ。誰もなりたくないけど、個展とかしたら人は集まるしさ。尊敬する人だっているんだなとか。わからないけど。
A:めずらしく、Dさんの例えに共感できないんだけど。
B:ははは。
C:はっはは。
D:でも、いっちゃってる人ってそういうことなのかなって。
B:ふーん。
A:一人触れられていない人が。つぎはぎの服を着た青年って出てきますよね。
C:どんな人だっけ。
A:クルツのところにいる、ロシア人の…。
C:はいはい。
A:あれもなんだか変ですよね。
C:でもクルツをすごく良く言う人でしょ。映画にもアメリカ人の写真家みたいな感じで出てくるんです。
A:あー。
C:なんかちょっとずつ変えているんですよね。
D:なるほどね。そんなになぞっているんだね。
A:見なきゃだめだね。
C:見た方がいい。船に乗っている、いっちゃってるやついるじゃん。あと「巡礼」ってなんなの。「巡礼たち」ってなんなの。
D:そうそう。
C:それも映画に出てくるんだけど。多分映画で違うのは、ベトナム戦争の軍隊の人たちとか、隊長とかを組み込んでいる。それは本に出てこない。それがさらに異常性を掻き立てるというか。そのぶん30分くらい長くなっているような気がする。
D:うんうん。
C:最初、ギャグ映画かなと思うくらいの感じ。でもそれをわざとやっているのがわかってきて、おそろしくなるというか。
A:名作ということですね。
C:ファイナルカット版は見ていないから、わからないけれど。
D:3時間くらいあるやつがあるね。
C:もともとのやつが2時間半あるから。完全版が3時間半くらい。
D:あーすげえな。
C:見れない。何が加わっているのかわからないけれど。
B:無理。3時間半…。
C:でも絶対見た方がいい。
B:ね。
D:見たいな。そうなんだ。
C:でも、この解説にもあった、「聖書的な表現が多い」ってあったけど、なんなんだろう。黙示録みたいって。わからなかったんだけど。
A:ルカが引用されているっていうのはあったような…33ページ?
C:あーそうじゃなくて。コンゴの奥地に入っていくのが、ジョン・バニヤンだっけ、『天路歴程』っていうのあるじゃないですか。天国にいくみたいな話を書いている。天国に行くんじゃなくて、地獄にいくみたいな話を書いているってことかな。それが聖書的でって書いてあって。それがあまりわからなかった。だから映画版が『地獄の黙示録』っていうんですよね。
A:ダンテってこと?
C:『神曲』?それもあるかもしれないけれど、あえて黙示録っていっているくらいだから、黙示録なんじゃないですか。原題が『アポカリプス・ナウ』なんですよね。
B:ナウって。
C:じゃなかったっけな。
D:本当だ。
C:その辺わからなかったな。
A:この辺は難しいですね。
C:モダニズム文学って面白いんだろうなって。モダニズム文学って何をもっていうのかわからないんだけど。よく言うよね。1900年前後くらいなんだよね。ジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』とか、バージニア・ウルフとかもそうですよね。いまだによくわからないんです。
A:『ユリシーズ』といえば、Eさんここまでどうですか?
E:ふふ。
C:妻が久しぶりに小説を読んでいるのをみました。でも『闇の奥』の前に『やし酒飲み』を手にとっていました。「いやいや」って言ったんだけど。
D:僕は訳者あとがきを読み忘れていました。解説で終わりだと思っていたら、訳者あとがきがあったんですね。
C:光文社のよさってこれですよね。訳者あとがきが多いっていうのが。
D:そこに村上春樹のことが書いてあるのね。
A:そうですね。
D:『1Q84』の教祖がクルツなんだね。なるほど。
C:『世界文学大図鑑』に載っていない本もあるんだけど、『闇の奧』については4ページくらい使っている。『世界の文学者』では見開き4ページフルで使っているんです。よっぽどすごいんだと思います。
D:影響力がね。
C:『地獄の黙示録』のシーンも載っています。クルツの帝国、カーツ大佐の帝国なんだけど。
A:『闇の奧』がすごい作品なのに、これをあえて重ねて作った『地獄の黙示録』がまたすごい作品というのは…、両方すごいんですね。映画にできたのはすごいですよね。
C:色々すごかったんですよね。途中で人が死んだりとか。俳優さんが代わったりとか。
D:監督は誰なの?
C:コッポラ。
B:フランシス・コッポラ。
D:え!そうなの。フランシス・コッポラ?はいはい。『ゴッド・ファーザー』の?
C:そう。『ゴッド・ファーザー』の三部作をつくって、その後に作ったのがこれなんだって。
D:そうなんだ。えー。
B:youtubeでちらっと見ていたら、CG使っていないのに爆発が多い。
C:もう怖くなるよ。ナパーム弾って名前を聞いたことあるけれど、「これからナパーム弾をぶち込んでやる」とか言って、林を焼いたりするんだけど、これを人間が作っているんだっていう怖さが。
D:なるほどね。
C:妻が観たいと言っていたのが、『地獄の黙示録』をいかにしてコッポラがつくったかというドキュメンタリーです。それが見れないんです。配信がない。31億円くらいかかっている。1971年当時ね。
B:すごい。
D:すごい作品なんですね。
C:興行収入が150億だったかな。
D:へー。作品賞とかとっているの?
C:なんか、当時ものすごく酷評だったんだって。
D:あーそうなんだ。
C:でも観たらわかるよ。これは高く評価できないでしょうって感じ。
D:じゃあ、後々カルト的な人気を?
C:いわゆる映像表現として、CGじゃないんだろうから「ありなんですか…」っていうのが尋常じゃなく多いんです。今だったら、映倫とかに引っかかっちゃう。
D:そうなんだ。
C:だから評価できないだろうなって感じだね。
D:面白そうだね。
C:(調べてみると)水曜ロードショーとかでやってたんだね。すごいな。
B:えー。
D:記憶にあるよ。小学生のころかな、「来週の金曜ロードショーは『地獄の黙示録』」って。うちの父親が見ていた記憶があるな。何かしら嫌な気持ちになりそうだから避けていたけど、今なら全然いけるね。
C:沼から主人公が出てくるのは、予告編とかで見たことあって。あれを見た時にはここか!って思った。いつくるのかと思ったら。そういう予告編とかテレビで見ていたなって。でも、これと『7月4日に生まれて』とかは…なかなか。
D:あーあれは観た。トム・クルーズだよね。
C:『セブン』とかも見れない。
D:そっか。
C:ぜひ映画観てください。
D:ここ(解説)には、『蝿の王』も『闇の奧』にインスパイアされたとあるね。
C:ゴールディングね。
D:読んだんです。めちゃくちゃ面白いですよ。
C:少年たちの話ですよね。
D:子どもが読むものなんだけど、全くもって恐ろしい話ですね。
C:狂っていくのは同じですよね。
D:はいはい。『動物農場』から、ユーモアを全部取ったみたいな。
B:うわ、最悪じゃないですか。
D:そういう話。ディストピアが。『十五少年漂流記』的に少年たちが漂着した結果、カルト教団が出来上がってくる。蝿を拝んでいく。もうおそろしいです。
C:そう考えると『バトル・ロワイヤル』とかも同じ系統なのかもね。
D:そうかもね。
C:そっかー。あれも観ていて怖かった。映画館で見ちゃって。「あと何人」とか出てくるんです。人が死ぬたびに。早く終わってくれと思いながら観ました。
D:でも、『蝿の王』はいいですよ。情緒があるというか。出エジプト記でアロンが金の仔牛をつくるでしょ?あれにも相当寄せている。そういうのもあって。人間って、象徴をつくって、それに帰依することで自分の主体性を明け渡して安心したいんだなって。それがまた子どもであることで、より際立つ。人間の弱さが。
A:でも子ども向けなんですよね?
D:そう。子ども向けなんだよ。
C:そうなんだ。
D:文体とかもそうだし。子ども向け作品だと思う。多分。そう認識していたけど。多分ブラック・ユーモアで、子ども向けに書いているんだけど、大人に書いている可能性は多大にある…。
C:それってもう芥川じゃないですか。
A:そうですね。
C:戻る、ですね。
A:「何が狂わせたのか」についてはわからないままですが、色々な人たちが解釈しながらいるんですね。
C:一週間後に、ちょうどコンラッドの新しいやつが出るらしいんです。さっきちらっと見ました。『ロード・ジム』という…。
A:それ、この本にもありましたね。
C:たまたま河出文庫から3月8日に出るらしい…。でも他の作品も基本的に海洋小説というか船が出てきて植民地みたいな話があって。同じなんですね。これもマーロウが出てくるんじゃなかったっけ?
A:そう。同じようにマーロウが出てくる。これもマーロウが語っている。
D:へー。
B:へー。
C:マーロウがコンラッド自身なんでしょ?コンラッドはもともと船乗りだから。
A:ということは、今後マーロウがクルツ的になっていく可能性もあるんでしょうかね。足跡を追っているっていう物語としても読めるのかもしれないですね。
D:狂言回しみたいなことですよね。
C:そうそう。手塚治虫でいうところの鼻が大きい人。毎回同じキャラクターで出てくるよね。
A:面白かったですね。
C:次(『やし酒飲み』)はもっと面白いよ。めちゃ面白いよ。Bさん読んだ?
B:1ページ読んだら…。
C:なんだ〜。
B:そしたらその後に「でした」とか、違う話なのかなというくらい…。
C:それが、もともとの文を生かした訳、名訳なんだって。彼の英語がぐちゃぐちゃだから、である体とですます体を混ぜているんだって。
B:そこで頭がわからなくなって。
A:では、満を持して半年くらい延ばしに延ばした、『やし酒飲み』ですね。
C:これの語りが楽しみです。
B:絶対読まなきゃって。
C:ちなみに、この作品(『やし酒飲み』)の15年後くらいに書かれた作品も買ったんです。チュツオーラの『薬草まじない』って本なんだけど。
A:いやいや。
C:がっかりです。全部読んでいないけど。
A:15年かけて…。
C;なんていうの、めちゃめちゃな感じがなくなっている。
A:そういうこと?
C:『やし酒飲み』は突っ込みながらじゃないと読めない。
A:時間もあれなので。日程を…。
D:何ページくらい?
C:解説が長いから本文は短いよ。

A:では3月22日でお願いします。16時から、お願いします。
C:来年度も月曜日の16時からですかね。
A:そうですね。そして作品の長さによって期間を空けたりしていきましょう。
C:でも確かに1ヶ月だと空きすぎている感じしましたね。
B:そう。久しぶりな感じした。
C:読んでないけどね。
B:はは。途中までは読んだ。
A:では今年度最後、『やし酒飲み』で乾杯したいと思います。よろしくお願いします。