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G suite導入顛末記 その10  G suiteの機能④ ドライブ(クラウド)

前回の投稿からすごく時間が経ってしまった。気づけば札幌の感染状況はすごいことに。少しでも早く状況がよくなることを願う日々である。

 

今回は、ドライブの機能について。インターネット上にデータを保存する機能を一般的にクラウドと呼ぶが、G suiteではドライブと呼ばれる。G suiteではない、個人アカウントでG mailを使っているで、ドライブも使っているという人はけっこう多いのかもしれない。

 

G suiteのドライブは、個人が使うマイドライブと他の人と一緒に使う共有ドライブに分けられる。G suiteの一番安いベーシックプランでは共有ドライブが使えない。ただ、マイドライブの中のファイルを他の人に共有することはできるので、当初はそれでもいいのかな、なんて思っていた。しかしながら、やはり色々とやりにくいことが判明。G suite導入以前には、事務所内のみ、あるいは専用パソコンのみで法人サーバ内の「共有フォルダ」というところにファイルを保存して共有していたのだが、それと同じような使い方もできない。ということで、共有ドライブの機能を利用するためにベーシックからビジネスにG suiteをアップグレードした。ちなみにこのアップグレード、利用者1人あたりの月額利用料が倍近くかかるので、費用的にはそれなりの負担にはなる。ただ、実際に共有ドライブを利用してみると、それだけの価値はあるとわかる。

 

現在稲生会では、共有ドライブ内の一番上の階層に、4つのフォルダをつくっている。一つは「医療法人稲生会」。名前の通り、法人内の業務ファイル等を保存している。二つめは、「みらいつくり研究所」。研究所は、医療法人稲生会の「社会活動」として行っているのだが、こちらもけっこうなファイル数があるので、別のフォルダを作成した。

 

三つめは、「G suite活用」。G suiteの活用方法に関するファイルはこちらに保存している。最後の四つめは「★限定編集★」。ここには、法人内のリスクマネジメントチームで行っている、ヒヤリハットの報告を集めたファイルが入っている。稲生会のヒヤリハット(日常業務の中で生じたエラーや、エラーにつながりそうな事象)の報告については、コロナ前は「ヒヤリハット報告用紙」に記載して、それを決められたボックスに入れる、という方法をとっていた。コロナによって分散勤務体制が始まってからは、半数以上の職員が事務所に行かなくなったため、紙媒体による方法は現実的ではない。そこで利用したのがG suiteのFormsという機能。詳しくは次回の投稿で説明しようと思うが、簡単にいえばアンケート機能である。以前は紙媒体であったヒヤリハット報告をこのFormsというアンケートに変更し、各職員それぞれの端末からヒヤリハットを報告できるようにしている。

 

このForms、何が優れているかというと、収集した回答を自動でスプレッドシート(Microsoftでいうエクセル)に変換してくれるのだ。それまでは用紙に手書きで書かれていた内容をエクセルシートに入力し直していたのだが、その手間が無くなるのだ!ずっと入力してくれていたえなちゃん、ほんとごめんね…。収集したヒヤリハット報告については、毎朝のミーティングで全職員に共有している。毎朝数件のヒヤリハット事象について聞くことで、法人の「安全文化」はかなり強化されたように思っている。ただ問題は、この自動生成されたスプレッドシートのファイル自体も編集できてしまうということ。ヒヤリハットだけではないのだが、こちらのシートのデータを誤って編集してしまうというヒヤリハットが数回起きたので、ヒヤリハットをヒヤリハットしないようにヒヤリハットの分析を行うリスクマネジメントチームのメンバーだけがアクセスできるようにした。共有ドライブでちょっと難点なのは、一番上の階層でしか「アクセス制限」ができないこと。なので、ヒヤリハット分析という法人内のチームの一つである活動に関するフォルダが、一番上の階層に鎮座ましましているのである。

 

共有ドライブに話を戻そう。共有ドライブの2つめの階層には、稲生会の各事業やチームのフォルダが11個置かれている。ドライブに限った話ではないが、データを保存するときは「階層構造」をきっちり整理するというのが非常に重要。分散体制によってG suiteの利用を始めた後、ドライブ内にフォルダを新しく作ることは全職員自由に行っていたのだが、この2つめの階層に置かれるフォルダがあまりにも多くなってしまい、目的のフォルダを見つけることが難しくなってきたため、この階層に新規でフォルダをつくることは許可制とした。ちなみに、共有ドライブ内のファイルの検索については、ファイルのタイトルの中の用語で検索できるのと、「最近使用したアイテム」もあり、さらには「候補」という、たぶんAIがなんとなく「あなたの見たいファイル、これでしょ?」的な感じで表示してくれる項目もあるので、ファイルは割と見つけやすいと思う。

 

ちなみに稲生会では、基本的にすべてのファイルを全職員が見られるようにしている。その結果、前述したように誤ってファイルを編集してしまった、というエラーはもちろん、「誤ってファイルを削除してしまった」「誤って別のフォルダにファイルを移動させてしまった」というエラーが生じてしまう。実際、診療スケジュールのスプレッドシートが削除されてしまうというエラーが複数回生じた(すぐに気づいたのでゴミ箱からファイルを回復することができたのだが)。これを防止するため、G suiteの管理者機能を使用し、ファイルの削除、フォルダ間の移動は一部の職員のみしかできないようにしている(ファイルのアップロードは全職員が可能)。ちなみに、共有ドライブ内のデータを、法人外部の人と共有できるかどうか、ということも管理者機能で設定可能である。共有ドライブには、患者さんの個人情報に関するファイルも含まれているため、稲生会では共有ドライブ内すべてのファイルを外部とは共有できないようにしている。外部の方とファイルを共有したいということもけっこうあるのだが、情報漏洩リスクには代えられない。

 

G suiteのビジネス以上のグレードだと、なんと共有ドライブが無制限!(ベーシックだと共有ドライブなし、マイドライブの制限が1人あたり30GB)。分散勤務体制になってから、ZoomやGoogle Meetを使ってオンライン会議をすることがほとんどになったが、その録画データをどんどん共有ドライブに保存し、それを会議に参加できなかった職員が閲覧できるようにしている。稲生会は現在、ビジネスよりもさらに上のグレードであるエンタープライズというグレードでG suiteを活用しているのだが、このエンタープライズ、通常は職員数 1,000人とかの大きな会社で利用することを想定したものである。それなのになぜ稲生会がエンタープライズのグレードを利用しているかというと、10月からビジネスグレードではGoogle Meetの録画機能が使えなくなったから。法人内の委員会などの会議はほとんどMeetで行っており、これが毎日いくつもあるので、これらを録画できないのはキツい。法人で2つ契約しているZoomアカウントを使うという手もあるのだが、Zoomアカウントは毎朝の全職員ミーティングと、外部との会議やみらいつくり研究所のオンライン活動で主に使用していて、それでほとんど埋まってしまう。でもなあ…、ビジネスからエンタープライズへのアップグレード、また価格が倍ちかいからな…、なんでMeetの録画機能を制限したんだGoogleよ、もともと予告していたとはいえひどいじゃないか…、なんて思っていたら、Googleの方から連絡がきて「エンタープライズへのアップグレード、いまなら大特価!」とのこと。ビジネスとそれほど変わらない価格でエンタープライズへのアップグレードが可能というではないか!録画データによる「時間を共有しない情報共有」の重要性を強く感じていたため、エンタープライズへのアップグレードを決めたのであった。さすがGoogle、ビジネスのエンタープライズな感じがベーシックになってるぜ、にくいよこんちきしょう、とつぶやいてみたのだった。

 

現時点では、共有ドライブ内のデータ量は一体どれくらいになっているのか想像もつかない。録画データや写真、動画データなども多く含まれているため、ものすごい量になっていると思う。「マイドライブでも職員1人あたり30GBだから、職員数をかけると2TB以上になるし、ベーシックでも大丈夫かなー?」なんて一瞬思った過去の自分に「このベーシック野郎!お前はビジネスのエンタープライズたる所以をわかってないな!」と言ってやりたい。ということで、データ共有も含めてG suiteを利用するときは、ビジネス以上のグレードを強くお勧めします。