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第13回みらいつくり読書会 開催報告

みらいつくり大学校企画
第13回みらいつくり読書会@zoom

【課題図書】
サン・テグジュペリ『星の王子さま』

【実施日時】
2020/10/8 16:00〜17:00

【参加者】
A,B,C,D,E,F (+ラジオ参加5名) 全11名

【内容】
A:みなさん、どの訳で読みましたか?
B:私は青空文庫で読みました。『あのときの王子くん』です。
A:すごい名前ですね。
C:私は河野万里子さんの訳を新潮文庫で読みました。
A:一番売れていそうなやつですね。僕は池澤夏樹さんの訳を読みました。池澤夏樹さんのエッセイが好きですし、他の人が読んでいない訳を読んだ方が良いかなと思いました。
D:僕は、小島俊明さんの訳を読みました。5年前に読んだ時には、内藤濯さんの訳でした。
C:内藤訳が日本では主流だったと何かで読みましたね。
A:オリジナル版でしょうか。
C:それしかなかったけれど、著作権が切れて、他の訳が出たんだと思います。
B:今日はEさんも参加です。
A:それだけつくっても売れるということなんですね。内藤さんの訳は『星の王子とわたし』というタイトルもついていますね。
C:Eさんはいかがですか?どの訳を読んだかという話をしていました。
E:ごめんなさい。
B:あらすじだけ読んで参加してくれました。
A:全然良いと思います。
C:感想を話していきたいと思います。私からいきますね。
A:その本が友人のお父さんにもらった本なんですか?
C:もらったというか、勧めていただいて、その時に買って読んだんですよね。確かに、教師になる人に勧めたら良い本なんだろうなと思いました。私は、わからないこともありながら読みました。大きく分けると、大人と子どもの比較があると思いました。大人性と子ども性の比較がこの本の大きな構成になっていると思います。私が思ったキーワードは、「大いなる神秘」です。その言葉とともに用いられている挿絵があります。何も書かれていないように見える絵に、どんな存在を感じていくことができるかということが、神秘ということなのかなと思いました。私はこの本を読みながら、Aさんの以前話していた「不在の存在」という言葉を思い出しました。その人が今生物学的に目の前にいなくても、その人との関わりを考えたり思い出したり、そのようにして関わっていくということがあると思います。そんなことが「大いなる神秘」なのかなと想像しながら読みました。
B:私は最後まで全部は読めなくて、途中からネタバレを読みました。平仮名が多くて読みにくかったです。つまずきました。温泉とかホテルとかで一人になった時に読みたい本だなと思いました。何かをしながら、誰かがいるところではなく、一人で読む本には良いなと思いました。子どもの心と大人の心、とCくんが言っていました。うちでは、真ん中の子どもが、広汎性発達障害です。その子はどこかに入りたがります。毛布にくるまったりするんです。安心するみたいです。先日、赤ちゃん用の布団を捨てようと思いましたが、その布団に布団カバーをつけてその中に入り込むのが大好きでした。布団カバーのチャックを開けて、フリースを中に持ち込んで、じーっとしているのがすごい好きなようでした。そういう私にはわからないけれどこの子にとって大切なものというのが、この『星の王子さま』に書かれているんだと思います。ネタバレの記事で「子どもの頃を思い出させる」とか「時間をかけて」とか書いてあるのはわかるような気がしました。忙しい中で読むともしかしたらイライラしてしまうかもしれません。もしかしたら、自分の心が現れる本なのかなと思いました。もうちょっと時間をかけて読みたいなと思いました。
E:さっきBさんにも話しましたが、偶然にも、子どもの頃に使っていた枕の柄が『星の王子さま』でした。自分で選んだわけではないので、おそらく母が独断と偏見で選んだんだと思います。母にどんな意図があったのか、おそらく何も考えていなかったと思いますが、ここで繋がるのも面白いなと思いました。Bさんに誘われてからインターネットで見てみましたが、こんなに長い作品だったんだと思いました。1時間でパッと読むべきじゃないかなと思いました。私も時間をつくって読み返してみたいと思いました。内容まではコメントできません。
C:おそらく、枕にかかれた絵は、有名などれかですよね。
E:王子様が立っていて、小さなバラが咲いているという絵でした。なんでこんな小さい星で、なんで人はこんなに大きいんだろうと子どもながらに思っていた記憶があります。
C:おそらくその辺りも、この作品のポイントなのかもしれません。
D:僕は、四年前に読んでいます。その時、なんでだか分かりませんが家にこの本があったんですよね。多分、ブックオフで100円でこの本を買ったんです。100円で買った本って全然読まないじゃないですか。僕も全然読んでいなくて。何かで引用されていたのをみたことがあって、読みたいなと思いました。でもその時の本は手元にないので、おそらく売ったんだと思います。今回は図書館で借りて違う訳で読みました。面白いほど忘れていました。「次はどうなるんだろう」と思って読みましたから。新鮮に読みました。今回気がついたことが二つあります。一つは、一番有名な「大切なことは言葉にならない」というセリフがあります。一番大切そうなあのセリフって、王子様が言っていないんですよね。いろいろなところで引用を間違えている人たちがいます。星の王子さまが言っているようにした「大切なことは言葉にならないんだ」という引用がたくさん世の中にはあります。だけど、本当は狐が言っているんですよね。もう一つは、読んでいて、これは銀河鉄道999だと思いました。多分、銀河鉄道999はここから来ているんじゃないのかなという説を僕は今回思いました。銀河鉄道999をしっかりとはみていませんが、あれは、異様な星に行って、異様な人たちに出会って、それらがこの世界の矛盾のメタファーになっているという話です。完全に同じようにして5つの星に出てきています。権力しかない星、金しかない星…というようにです。銀河鉄道999はここから来ているんじゃないかなと思いました。この二つが僕の感想です。
A:僕は2015年くらいにフランスに行ったことがありました。何となくその国に行くとその国の言語で書かれた本を買いたくなるじゃないですか。でも100円で買った本と同じくらい読まないと思います。結局パラパラとめくって中身がわからないままだったので、今回は初めて読みました。さっき、Bさんが「一人で読みたい本」と言っていましたが、僕は寝る前に一人で読んでいたので、結構読んでいて泣きそうになりました。「本を読んで泣きそうになる」とかよく言うけれど、僕はみんな嘘をついていると思っています。自分でページをめくっています。テレビだと向こうから入ってくるので「おおー」と思うかもしれないけれど、本は自分でめくっているじゃないですか。「ああー」とか思っていても、「自分でめくってるじゃん」と考えると覚めちゃいます。
C:そんな意見は初めて聞きました。
A:「あなたはページをめくると涙する」とかあるじゃないですか。めくらなきゃいいのに、と思います。
D:「泣きながら一気に読みました」とかですね。そんな人見たことないですよね。
A:自分の意思が介在しているんだなと思ってしまいます。
A:ハイデガーの『存在と時間』と並行して読んでいるので、そういう解釈になってしまいます。大人と子どもを対比していると言っていました。子どもの感覚でとらえる世界、つまり子どもの感覚と大人の感覚を対比させているということなんだと思います。大人でいうところの常識で世界を捉えてしまうことへの批判なんだと思います。「大切なものは目に見えない」というセリフもそうですが、最後にも「子どもにしか見えない」「大人たちには理解できないだろう」というように書いています。「固有性」についても書かれていると思いました。星の王子さまの星に咲いていた花と同じ花が地球に5000本くらい生えていたという話があります。「いっぱいあるじゃん」と思いつつ、それを自分の星の花に伝えたら落ち込んじゃうだろうという部分があります。だけどそうではないということに気がつきます。先程のDさんの話と同じように、王子様もわかっていないんです。目に見える範囲では同じ花に見えるけれど、その向こう側にある固有性は別にある。そんなことを言いたいのかなと思いました。もう一つが「飼いならす」の部分です。狐が「僕を飼い慣らしてよ」と狐が言います。「飼いならす」ってどういうことかなと思いました。最後の方まで見ていると、固有性を捉える、固有性があるものとして関わりをもつ、ハイデガーがいう「馴染む」ということかと思います。「世界に住む」というような、本当の関わりともつということかと思いました。動物とか物とかに対して、そのような関わりをすることを「飼いならす」と言っているのかなと思いました。ハイデガーはよく「ものをものする」と言います。ものがただのものではなく、人間に馴染む形になるというような意味です。一番最後のシーンは看取りのシーンに見えました。星の王子さまが亡くなっていくプロセスを、ぼくが見ているというようなことです。そんなことを印象付けるような最後の絵です。Cくんが言っていたように「不在の存在」というようなことなんだと思いますが、最後の絵にはもういないですよね。でも「いる」というようなことです。そこには見えないけれどいるんだと言いたいがための最後の絵です。全く同じ絵に王子様がいるかいないかということです。他の訳を読みたいなと思いました。私は本を読む時に、ガッとページを開きます。私が買った本は、強く開くと落丁しそうになりました。だから気を使いながら読むしかなくて、自分固有の読み方ができませんでした。
C:「飼いならす」とありましたが、私の読んだ訳では「なつく」となっていました。
A:「馴染む」とか「親しむ」ということかもしれませんね。
C:キツネが初めに「君とは遊べないよ」と言います。「まだなついていないから」と言っています。「馴染む」「親しむ」そのような意味ですね。キツネとの会話もこの本の大切な部分になってくるように思いました。
B:この絵もサンクチュペリ描いたんですよね。知りませんでした。サンテグジュペリですね。
C:最初言えていませんでしたね。
A:急に韓国語みたいになりました。
B:文章も絵も同じ人が書いているんだなと思ったんです。
A:サン・テグジュペリですね。
B:そうです。サン・テジュグペリ。
C:もう言えてませんね。私は今回の読書を通してサン・テグジュペリと言えるようになりました。私は数ヶ月前に『夜間飛行』を読みました。似たようなところもありつつ、大人向け子ども向けの違いがあると思うので、面白かったです。最近お気に入りの『国語便覧』にもサン・テグジュペリについて書いてあります。行動主義文学の代表的作家となったとあります。ここには「心理描写を極力排し、行動に人の本質を求める」とあります。でも『星の王子さま』には心理描写があるような気がして読んでいました。サン・テグジュペリは何を言いたかったのか、何を批判したかったんだろうと思いながら読みました。多分、世界の見方もそうですし、途中で出てくる王様や酒浸りの人なども皮肉に書いているんだと思います。何度も夕陽を見るシーンがあります。ここでは何を批判したかったのでしょうか。そんな批判の対象がはっきりわかったらもっと楽しく読めるのになと思っています。
A:あの夕陽も、1日に一回太陽が昇って沈むというのは常識だけれど、ハイデガー的にいうと頽落した通俗的時間概念なんだと思います。これは必ずこうなってこうなるというようなものです。でもそうではないと、子どもの感覚では違うと言いたいのだと思いました。酒飲みの人は、恥ずかしいことを忘れるために飲んでいると書いてありました。何が恥ずかしいのと聞くと、酒を飲むのが恥ずかしいと言っていました。河島英五の歌が流れてきそうでした。
B:人間の欲求が出ていますよね。王様の権力、酒飲みの欲望などです。人間の欲求が星に現れているのかなと思いました。
D:部屋から出ない地理学者とか、規則正しくランプを灯す人ですよね。類型化するというか。ランプの人だけは友達になれそうな気がしたんですよね。王様、見栄っ張り男、所有するビジネスマン、飲むことに取り憑かれた人、ランプ男。ランプ男だけはまともに見えたとあります。それは、ランプ男だけは自分に夢中になっていないからだとあります。それはすごく印象に残っています。この人は他の人から軽蔑されるだろうな…とあります。自分に夢中になっている人とそうでない人というのは大きな線引きがあるんだと思いました。キリスト教的に言うと、偶像の定義と重なると思います。僕は、偶像は煮詰めると自分に夢中になることだと思っています。
A:自分以外のものの世話をしているからだとありますね。
D:訳によってだいぶニュアンスが変わるのかもしれませんね。
A:『あのときの王子くん』ではどうですか?
B:『あのときの王子くん』だけばかにしていませんか?どうやって書いてあったでしょうか。
A:「自分じゃないことにあくせくしていたから」ですね。全然違いますね。
B:他の訳もこんなに平仮名が多いんでしょうか。星、王子くらいしか平仮名じゃないです。
A:「電気」に振り仮名がふってあるくらいですからね。
C:その後、17節で蛇が出てきます。蛇と聞くと、私は聖書を思い出します。17節で「大人たちは大きな場所を占めていると思っている」とあります。「バオバブみたいにすごいものだと思っている」ともあります。バオバブや大人たち、蛇は批判の対象なのかなと思いました。
A:色々とこれはなんかのことを言っているんだろうな、と思うものが出てきますよね。散りばめられています。
D:なんかジブリっぽいですよね。『千と千尋の神隠し』でもそうですが、何かの象徴性があって。作者も意図していないことをこちらが読み込むことが多い作品なんだと思います。
A:それが優れた文学の特徴ですよね。作者の意図を超えている。
D:そうですね。解釈に開かれていることですね。読み継がれるわけですよね。これは全世界的に人気がある本なんですか?
A:そうなんじゃないですかね。
C:インターネットのサイトには「聖書の次に売れているんじゃないか」と書いているものもありました。
A:日本でこれだけ出版されていることを思うと可能性はありますよね。
D:日本で局地的に流行っていて、世界的に人気があると思ったらさほど人気がなかった、ということが時々ありますよね。ハイジとかそうなんですよね。日本でとても人気があるのですが、世界的にはスイスの文学マニア以外はあまり知らないようです。『フランダースの犬』もそうらしいです。『フランダースの犬』の最後のシーンありますよね。そこには銅像があります。日本人しか来ないらしいです。そんな現象ってあるから、『星の王子さま』もその類なのか、あるいは本当に世界的に人気があるのか、と思っていました。
A:『星の王子さま』は後者じゃないですかね。
D:僕は、日本で人気のある理由は「大切なことは言葉にできない」だと思います。日本の伝統にある禅の「不立文字」はまさに「大切なことは言葉にできない」という意味です。そういう心象性を日本人はもっています。言葉にした時点で嘘臭くなる。語るに落ちるというような。大切なことは言葉になんかできないんだ、というのは日本人の心象性によく合うんだと思います。それがはまったのかなと思っています。
A:この『星の王子さま』は「日本人だとすごくわかる!」という感じでもないような気がします。
D:全貌を読むとそうですよね。
A:全然違いますよね。
D:「日本だなー」という感じはしないですよね。「大切なことは言葉にできない」というのが日本でバズるということはあり得るなと思ったんです。日本の長い伝統と本当に合致しているから。
A:話は違いますが。26節で、蛇の話になります。「きみが噛まれると困るからね」…「二度目に噛むときには毒がないんだった」と言います。これってなんですか。
C:意味がわかりません。
A:誰かが犠牲になったら後の人は大丈夫ということでしょうか。わかりませんね。
C:これも何かを象徴しているのだろうかと読んでしまいますよね。
A:蛇に噛まれて死ぬんですよね。
B:ネタバレにはそう書いてありました。
D:蛇に噛まれて死んだかどうかもわからないですよね。そんな感じですよね。この話自体が、夢オチというか、現実にあったことかどうかもわからないように書かれていますよね。フィクションラインをどこに設定していいかわからない話です。フィクションラインを、最初と最後の「6年前不時着した」というところに置くと、この人が極限状態で見た、トランス状態で見た夢なのかもしれないです。そういう解釈も成り立つし、本当にあったことなんだという解釈も成り立つようなつくりになっています。だから、物語に整合性があるかどうかにはあまり意味がない話なのかもしれません。プロットに破綻があって当たり前、そもそもトランス状態でみた夢なんだからということですね。
A:構造化したいですね。最初から最後まで読んでしまいましたが、何節から何節まではこの話、といったように書いてみたいです。
B:Eさん引いていますよ。
A:なんでー。枕にしていたからって。
C:このあとでしにくい話ですが、構造化を試みました。
A:どんな構成になっていますか。
C:やはり6年前を思い出しているというのが基本にあります。別の視点ですが、だいぶ前に買った雑誌に『星の王子さま』について書いていました。kotobaの孤独を特集した回です。
A:kotobaはいい雑誌ですよね。
C:ここで『星の王子さま』について書かれていました。行動主義文学ということも書いてありました。「私」として出てくる一人称は、おそらくサン・テグジュペリの投影です。でも王子も、自分自身なのではないかと書いてありました。
D:そういうことなんですよね。『マルホランド・ドライブ』という映画があります。デヴィッド・リンチです。めちゃくちゃ不可解な映画として有名です。それは夢なんだけど、夢の中で妬む相手が自分なんです。本当に訳がわからない。どこが夢でどこが現実なのかわからない。時系列をずらしているのもあります。いろいろな解説があるんだけれど、多分こうだという定説があるせにせよ、夢という構造を取ると、自分が誰かということが意味をなさなくなります。だから、キツネも自分自身なのかもしれないんですよね。ヘビも自分なのかもしれません。自我が溶け出している感じですよね。ただ僕は、一貫して一番に押し出しているメッセージ性みたいなものをあえて一つ挙げるとすれば、「センス・オブ・ワンダー」という言葉で表される言語とか数値とかに還元せずあるがままに驚くというようなことを大人になると忘れてしまう、それらを思い出そうぜということではないかと思います。夜空を見上げたときに羊がバラを食べたのではないかとか、食べなかったのだろうか、食べなかったとしたらこの世界は輝いているが、食べたとしたら星空は涙色なんだ、というのは、子どもしか考えないです。でもそういうことを思い出そうよという話なのかな、と思いました。彼はそれを一番言いたかったのかなと思いました。
C:kotobaには、王子にとってもイニシエーションの物語だし、飛行士である自分にとってもそうなんだと書いてあります。孤独を通したイニシエーションなんだとありました。別な記事に書いてありましたが『星の王子様』の冒頭、「レオン・ヴェルトに」とあります。ユダヤ人で、フランスに住んでいるけれどナチスの弾圧を受けている。サン・テグジュペリはアメリカに亡命をしています。
A:そうなんですか。
D:テグジュペリはユダヤ人なの?
A:そうじゃないよね。亡命していないんじゃないですか。フランスで郵便飛行をしていたんですよね。
C:『星の王子さま』の訳者のあとがきには「亡命先のアメリカで発表した『戦う操縦士』では」とありますね。
A:なんのために亡命したんでしょうか。
C:あとがきには「亡命先のアメリカで発表した『戦う操縦士』は、ヒトラーの『わが闘争』に対するデモクラシー側からの最良の回答と高く評価された」と書いてあります。
A:どう考えてもユダヤ人の名前ではないですよね。
C:確かにそうですよね。
D:ユダヤ人を擁護するような発言をしていたからという理由でしょうか。
A:アントワーヌですからね。フランスですよね。
D:レオン・ヴェルトはなんですか?
C:そのレオン・ヴェルトはフランスでユダヤ人として弾圧を受けていた人だから、反ナチや平和主義のメッセージとして『星の王子さま』が書かれているんじゃないか、という読み方もあるようです。
D:1943年ですね。フランス語の初版は。まさにそんな時期ですね。
A:亡くなったのはどのくらいでしょうか。
B:44年とありますね。
C:亡くなったときに飛行機の中から所持品として別な新しい本が見つかったけれど、出版された本としては『星の王子さま』が最後だったと書いてあったと思いました。
A:1948年に『城砦』とありますね。これは死後に発表されています。『人間の土地』という作品もありますよね。この作品が『星の王子さま』の前です。
A:Fさんは『星の王子さま』を読んだことありますか?
F:読んだことあります。家にあります。なんだかわからないなという感想で終わった記憶があります。
A:ラジオ視聴している人でわかる人いるでしょうか。
F:不思議な世界というか。よくわからないまま子どもたちに読み聞かせていました。
A:子どもたちに読み聞かせるには長いですよね。
F:長いですよね。一人で読んで、子どもたちは入れ替わり立ち替わりでした。
B:最後まで聞く子はいないんですか?
F:まあ、それでいいんですよ。
A:長い上に、夜寝るときに読んだら「どういうことだよ」「寝られないわ」ってなりそうですよね。
F:どういうことだよ、と思いますが、それは大人だけで、子どもはそんなこと考えないのかなと思います。今日話題に挙がったのでもう一度読んでみようと思います。これってなんなんだろう、と思わせるという世界なんじゃないですかね。
C:そんな話をしていたんですよね。
B:核心をついた感じですね。
A:前の方に王様の話があります。王様が最終的に「大使を命ずる」と言います。でもその声には威厳があったとあります。最後に王子様が「大人というのは変だな」と考えながら、また王子様は旅路についたとあります。この王様、どうしたらいいんでしょうね。威厳をもって大使に任命したのに「大変だな」と思われちゃう。
F:それが次のステージに進ませたんでしょうかね。ひらめきで喋っていますが。
A:20節で王子様が花の上に倒れて泣きます。これは、自分の星で一つしかない花だと思っていたのに、ここの庭だけで5000本も咲いていると知って、誰ももっていない花を持っているから豊かだと思っていたけれど、僕のもっていた花は普通の花だった、と倒れて泣きます。どういうことでしょう。特別な花というのは、最初に出てきた痴話喧嘩をした花ですよね。どういうことなんでしょうね。
C:私は、先ほど話題になっていた「固有性」ということについて書いてあると思いました。「ぜんぜん固有じゃないんだ!」と思って泣いたんだと思いました。でもその後にやはり固有だったんだと気が付きますよね。
A:そういうことを、旅をすることによって知ったということですよね。旅をする前に花と喧嘩をしていましたよね。この花の感じもよくわからないんですよね。他の訳がどうなっているかわかりませんが。まあまあ機嫌が悪いです。
C:つれない感じですよね。
A:そこにいたら気になるから、ぐずぐずしないで行ってよ、みたいなことを言います。本当は行って欲しくないんでしょうけど。そんな感じ。難しいですね。
D:ちょっとユングっぽいんですよね。オルターエゴとか、アニマとかアニムスとか。
A:「影」のような話ですよね。
D:そんな解釈をしていそうな話ですよね。でもこういうのって往々にして書いている人は何も考えていないということが多いですよね。宮崎駿もそうですけど。ポニョは子宮のメタファーで〜とか言われていますよね。
B:トトロは実は死んでいたとか。
A:ポニョは結構怪しさがありますよね。
D:ただ宮崎駿はそこまで考えていないのか、それとも宮崎駿がトランス状態でみた夢っていうことですよね。ポニョとかは。論理的には破綻しているからこそ、真実に肉薄できることがありますよね。『星の王子さま』は難解な話ですね。
A:難解でしたね。もうちょっと勉強して出直します、という感じです。
C:これが議論になるかはわかりませんが、私は、サン・テグジュペリが平和主義者というか、戦争に反対しているんだと思っていました。でも本人は飛行機乗りで戦争に行くことを選んで死に至ります。『夜間飛行』でも自分の命を犠牲にしても戦うことを肯定的に捉えているように私は読んでいます。必ずしも「ナチスに反対すること」が「戦争をしないこと」ではないんだなと思ったんです。そのあたりで、私は彼の言いたかったことはなんだったんだろうとわからなくなっています。私も解説本とかも読んでみたいと思っています。
A:その辺りについてですが、『人間の土地』の新潮文庫版のあとがきを宮崎駿が書いているんです。
D:あーそうですか。
A:表紙の絵も宮崎駿なんです。
D:それは面白いですね。
B:ナウシカっぽいです。
A:宮崎駿が、あとがきに、Cくんが言ったようなことを書いています。宮崎駿はどちらかというと平和主義、反戦主義じゃないですか。だけど飛行機は大好きです。飛行機というのは、結局は武器なんだけれど、武器としてつくられたんだけど、宮崎駿も子ども時代に飛行機に憧れていたし、アニメーション作家になった今も憧れをもっている、ということが書いてあります。「飛行機の歴史は凶暴そのものであるが、僕は飛行機たちの話が好きだ。…僕の中に凶暴なものがあるからだろう。…日常の中だけでは窒息してしまう。」と書いてあります。これを読んで、かつ『風立ちぬ』とかを見ると色々考えるところありますよね。単純に戦争反対、とかいうことじゃないんでしょうね。
D:『紅の豚』ってイタリアが舞台でしたっけ。それでもなんだかサン・テグジュペリを彷彿とさせるなと思ったことがあるんです。あの時代の飛行機に乗っていて、冒険をしていて。
A:ジブリに似ているというのは、宮崎駿はサン・テグジュペリが結構好きなんじゃないですかね。
D:そうかもしれないですね。
A:次どうしますか?
B:次のこと、少し調べました。私が読書ネタバレを検索してきたときに出てきたやつなんですけど。読書ブロガーの方が、海外古典文学おすすめという記事を書いていました。25歳の方です。今まで読んだ『イワンの馬鹿』とかカフカ『変身』とか入っていました。一つが、トーマス・マン『トーニオ・クレガー』です。ドイツの方です。
A:ドイツは、こないだ読み終わりましたよね。
B:カフカやヘッセを読んだ人におすすめと書いていました。もう一つはフランスのカミュ『異邦人』です。
A:だからフランスも今回やりましたよね。
B:だっておすすめって書いてあったから。
A:違う国に行きたいんですよね。
B:だってイギリスとかスペインとかなかったんだもん。
D:カミュね。
A:僕は他のヨーロッパで、と思って探しましたよ。しかも短いやつです。
B:素晴らしい!
A:そんなに短くはないかな。イギリスだとシェイクスピアですよね。『マクベス』が一番短いです。スペインだとカルメンです。ギリシャだと『オイディプス王』でしょうか。エディプス・コンプレックスのやつですね。
C:ロシア、ドイツ、チェコ、フランスと来ていたので、次はイギリスかなと思っていました。
A:それか北欧でしょうかね。
C:確かに。
A:北欧だとイプセンの『人形の家』がすごく短いんですよね。でも戯曲ですね。イギリスとかも古典となると戯曲が多いかもしれません。
B:今言ったやつ面白かったんですか?
A:まだ読んでいません。これからです。
C:アメリカ文学に行くには少し早いですよね。
A:アメリカに行ってしまうと…。
B:帰ってこれない…。
C:アフリカを通り越していますしね。
A:いつかラテンアメリカに行きたいですけどね。
D:『やし酒飲み』は大丈夫ですか?
A:アフリカ行きますか?『やし酒飲み』は相当特殊ですよ。アフリカとラテンアメリカは似ているんですよね。ラテンアメリカだと長いけれど『百年の孤独』を読みたいです。
D:ガルシア・マルケスでしたっけ。
C:気合入れないと読めないですね。シェイクスピアは読んだことありますか?
A:ないです。
D:僕もないので一度読んでみたいです。
A:だから買ってみたんですよね。
B:それ一冊『マクベス』ですか?
A:一冊『マクベス』です。
B:もうお腹いっぱいになっちゃいました。
A:でも後ろの方は解説だから。全部で140ページです。そして戯曲だから短いですよね。
C:チャペックスタイルですね。
A:後は、青空文庫に『あのときのマクベスくん』があるんじゃないでしょうか。
B:なんですかそれー。シェイクスピア行ってみますか。読めなかったらみんなに頼ります。
A:青空文庫には坪内逍遥の訳がありますね。違うのかな。
D:漫画で読破、というのもありますよ。
B:最終的には漫画で。
D:ありですね。
C:『ベニスの商人』はめちゃ長いですか?
A:シェイクスピアで短いのは『マクベス』と書いてあった気がしますね…。
B:短い方がいいな…。
D:シェイクスピアは読みたいですね。いわゆる英語を使う国では、小中学校の教科書に出てくるんですよね。みんな知っているんです。これを一冊読んでおくと、シェイクスピアを読んでおくと、海外の人と話しやすくなるんだろうなと思っています。
C:シェイクスピアだと、やはり『マクベス』が読みやすいでしょうか。
A:読みやすいのは『ロミオとジュリエット』と『ベニスの商人』と書いてあります。岩波文庫になっているもので一番短いのはおそらく『マクベス』ですね。『ロボット』よりは短いと思いますね。『ロボット』は結構長かったですよね。いけると思いますよ。
C:『マクベス』にしてみましょうか。
A:『オイディプス王』読みたいですね。
C:よく引用されていますよね。
A:これは短いですよ。イギリスに行く前にギリシャはどうですか?ギリシャ神話、ギリシャ悲劇だから読んでもいいんじゃないですか?
B:エディプス王?
A:エディプス・コンプレックスってあるじゃないですか。
D:そうです。『海辺のカフカ』ですよ。「お前は父を殺し、母と寝るだろう」というのがありますよね。あれはここから来ているんですよね。
A:でも本書では、エディプスはそのことを知らないんですって。知らないうちにそういうことになっちゃうということみたいです。ギリシャ悲劇行きましょうよ。
C:それでも良いですね。さっきDさんが言っていた漫画で読むシリーズがある本はいいかもしれないですね。
A:青空文庫にありそうですね…ないかもしれません。
D:『漫画ギリシャ神話』とありますよ。中公文庫から出ていますね。
A:「100分de名著」にもありますね。
B:あ〜。
A:じゃあ『オイディプス王』にしましょう。南欧に行く感じで。
C:はい。いいですね。
A:南欧に行って、それからイギリスでしょうかね。それかスペインの『カルメン』を挟んでイギリスか。
C:イギリス行って、アフリカ行って、ラテンアメリカに行きたいですね。
A:アフリカに行って、南アメリカに行って北上すると良さそうですね。間にキューバを挟むとか。
C:日程はどうでしょうか。

C:時間帯はどうしましょう。13時にするか、それとも今回ラジオ参加してくださった方が多かったので16時にするか。もしかすると時間帯ではなく『星の王子さま』だったからかもしれませんが。
A:『オイディプス王』で激減したらどうしましょう。可能性はありますね。
C:では、19日(月)16:00〜17:00でお願いします。『オイディプス王』でお願いします。そのうち、読書会の小テストをやろうかなと思っています。顔と名前を線でつないでいく問題です。それではこれで終わります。ラジオ参加の方もありがとうございました。