2020年4月、世界は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに覆われ、日本でも緊急事態宣言が発出されました。正体不明のウイルスに怯える日々で私たちは、「いのち」というものについて考えざるを得ない状況になりました。2020年4月1日に、「みらいつくり研究所ホームページ開設によせて」と題して掲載した文章を再掲します。
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私たちは、困難を抱える人々と「ともに」学び、実践する「コミュニティ」をつくることを重視してきましたが、このウイルスはまさにそのコミュニティを分断します。生命・生活・人生といった「いのち」を脅かし、人々の連帯を阻害し、人々の心に「不安」を侵入させ、「よりよき社会=みらい」を描くことなどできないような気持ちにさせていきます。
しかしながら私たちは、こういった危機も含めた困難から学び、同じ困難を抱える者同士として、連帯し、実践してきました。目の前にあるこの困難からも、これまでとは違ったコミュニティでともに学び、みらいを描いていくことができると思います。
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2018年度から始まった、障害の有無によらずともに学ぶ場である「みらいつくり大学」でも、「いのち」をテーマとした学びがありました。しかしながら2020年度からは、さらに深いレベルで「いのち」について学ぶ必要性が生じたと言えます。
そこで始まったのが、「哲学学校」です。
哲学学校は、私(土畠)と、みらいつくり大学でともに学ぶ仲間であった三田村亜依さんとで立ち上げた活動です。
奇数回は、大阪哲学学校編『生きる場からの哲学入門』を課題図書として、毎回1章ずつを取り上げ、参加者で順番にレジュメを作成し、30分の報告の後に1時間のディスカッションを行いました。
偶数回は、本格的な哲学書に挑戦することにしました。といっても、哲学の専門家がいるわけではありません。参加者全員で「わからない、わからない」と言いながら、それでも何かを見出そうとする、「修行」のような場になりました。そんな修行も、仲間とともに行えば楽しい場になります。本の内容もわからない、他の参加者の意見もわからない、自分がそれらにどう向き合うべきなのかもわからない。そんな「わからない」が重なると、なんだかとても楽しいのです。
2020年度に偶数回で取り上げたのは、「20世紀最大の哲学書」とも呼ばれるマルティン・ハイデガーの『存在と時間』です。「いのちの差し迫り」を感じる日々の中で、「存在とは何か」ということについて考えました。
2021年度は、ハンナ・アーレントの『人間の条件』を取り上げました。ハイデガーの弟子であり愛人でもあったアーレント。ユダヤ人としてドイツから亡命した先のアメリカで、人間と社会の関係について考察しました。
2022年度は、エマニュエル・レヴィナスの『全体性と無限』を取り上げました。アーレントと同じくユダヤ人であったレヴィナスは、ナチス・ドイツの虐殺により家族を失い、自らはフランス軍として従軍するも捕虜となり、獄中で「存在とは何か」を考える中で、「他者」の重要性を見出します。
2023年度は、ジル・ドゥルーズの『差異と反復』を取り上げました。前年度のレヴィナスとは異なり、「自己と他者」の区別がない、さらに言えば「個人」という区別もない「差異」と、「差異そのものが繰り返される反復」について考察しました。のちにドゥルーズは、精神科医として障害当事者に関わる中で社会変革運動も行ったフェリックス・ガタリとともに『アンチ・オィディプス』など複数の著作をなして世界に大きな影響を及ぼします。
2020年度の開始後、哲学学校は「毎週火曜日の午前10時半から12時」に開催していましたが、2023年度の途中からは「隔週金曜日の午前10時半から12時」へと変更してペースダウンしています。その結果、2023年度の偶数回は2024年7月26日(金)が最終回となり、「2024年度の偶数回」は2024年8月23日(金)が初回となります。
2024年度の偶数回では、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』を取り上げます。2022年度は「他者」について学び、2023年度は「差異」について学び、2024年度は「性という差異」について学びます。哲学学校で「ジェンダー」を本格的に取り上げるのは初めてのことになります。
これまでの課題図書とは異なり、今回は総ページ数がかなり少なくなっているので、各回で取り上げる分量はかなり少なくなっています。ジェンダー研究においては「古典」とされている本ですので挑戦しがいはあると思いますが、「難解」とされている本ですので、ディスカッションでともに「わからない、わからない」と言いながら学んでいけたらと思っています。
奇数回については引き続き、『世界哲学史』第1~8巻を課題図書として学んでいきます。
全部で約80章あり、1年間で終わることはできないため、古代と現代を交互に1章ずつ扱い3年間で読み終える計画です。今年度は第6巻第2章「道徳感情論」から開始します。今後は4巻と5巻をメインで取り扱う予定で、いよいよ折りたたみ哲学史も終盤戦です。
奇数回の当日は、30分ほどレジュメを用いて本文の内容を報告し、残り1時間は参加者全員で内容について議論します。奇数回の初回は、8月9日(金)からになります。
奇数回・偶数回どちらも、カメラ・マイクオフの「ラジオ参加」や、Youtubeライブ配信での視聴参加も可能です。
ZoomのアドレスやYoutubeライブ配信のアドレス(開催直前に掲載)は、会員ページにあるカレンダーで確認できます。仕事などでリアルタイムの参加が難しいという方も、会員ページのアーカイブ録画から視聴できます。
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みらいつくり研究所
哲学学校担当
土畠・吉成