理学療法士 金子直美
ある日看護師さんから、相談がありました。
どうしたら寝ている人を楽に動かすことができるだろうか?というような相談でした。
その時私が考えたことが、「楽」に「だれ」がなれるのがいいものか?でした。
ところで、皆さんご存じでしたか。
平成25年の報告では、社会福祉施設をはじめとする保健衛生業においての腰痛は、最近の10年間で発生件数が2.7倍に増加し、腰痛予防対策の推進は重要な課題と言われていました。
そして通知されたのが、平成25年6月の「職場における腰痛予防対策指針」です。
その中で通知されている内容の一部をちょこっとだけご紹介させていただくと・・・
『満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること。満18歳以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすること』
となっております。
で、『人力のみにより取り扱う物の重量』を具体的に計算してみました。
例えば 体重70㎏の男性Aさんならば 28㎏以下の重量
体重80㎏の男性Bさんならば 32㎏以下の重量
さらに女性ならば、
体重50㎏の女性Aさんならば 12㎏以下の重量
体重60㎏の女性Bさんならば 約14㎏以下の重量
とされています。病院や福祉施設でこれを遵守するためには、どうしたらいいんでしょうかね。
どうですか?
さて、看護師さんにいただいた相談内容に話を戻します。
皆さんならば、どんな方法を考えますか。あるいは、日ごろ介護に携わっている皆さんはどんな風にされてますか。
私がまだ仕事をして4~5年の頃に、母がなぜか「介護施設の仕事に就いた、明日から行ってくる」というのです。あいまいな記憶ですが勤めて3日後くらいで、ひどい腰痛となり、さすがの母も続けられないとすぐに退職してしまった、という出来事がありました。後日聞いたところ、初日から入浴のために高齢者を一人で抱きかかえる介助をさせられたとのことでした。早々に退職してしまいましたが、正直私も安心した事を憶えています。果たして介護の現場はあれからどう進化してきたんでしょうか?
冷蔵庫、洗濯機、テレビは、その昔電化製品の三種の神器といわれました。多くのご家庭でなくてはならないものとして存在していて、あって当たり前のものとなっていますよね。
ご自宅で介護されているご家庭に、あって当たり前の介護の三種の神器は、果たしてもう皆さんの手元にはありますか?
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『介護の行方』
介護現場の実情と今後について、様々な立場や視点から切り込みます。(「介護の行方」は不定期連載のコラムです)