Works

太樹さんのこと_vol.6

2025.10.24_公開

リビングに入って,
少し誰も話さない時間が流れます.
まずは親子の距離感をそこにいる皆が雰囲気で感じ取っているようでした.
お父さんが冗談を言いました.
みんなが少しプププと笑いました.

30分弱しか家にはいられないことを,
それぞれが気にしているようでした..

ラポールのお二人が,太樹さんの近くで機器のことを梅村さんに尋ねました.
おそらく,次回以降に,お出かけがもっと当たり前になった時に,
自分たちには何ができるだろう,と考えているのだろうと思います.

梅村さんはじめ,今回のお出かけを担当したスタッフは,少し太樹さんから遠くに下がりました.
言葉にはなりませんが,おそらく入院する前に関わっていたラポールの二人との関係を察して,
梅村さんたちは少し後ろに身を置いたのだろうと思います.

ラポールのお二人と太樹さんの会話が弾みます.
「太樹,魔女の爪になってるよ!痛くないの?」
「大丈夫」(太樹さんは表情で返事をします)
「こないだ,ユニフォームもらったんだって?誕生日」
「うん」(太樹さんはyesの返事をして,ニコッと笑います)
「今日,髭剃ったの?」
「うん」
「いくらの季節だよ.いくらどんぶり食べたいね」
「太樹はいくらがたくさん,ご飯すこーしだよね」




「コンコンコン」
太樹さんが舌を鳴らします.
「サクション?」梅村さんが吸引機に手をかけます.
(太樹さんがyesの表情で伝えます)
ラポールの二人がそのやり取りを見ています.
梅村さんが吸引を行います.
ラポールのお二人が太樹さんに声をかけます.
「かっこいいね,それで合図なんだね」
「コンコンコン」
太樹さんはニコッと笑ってもう一度合図してみせました.
「うん,わかった.覚えておくね」
そんなやり取りを見ていて,私は涙が出るのを必死に我慢しました.

続きます.

2025.10.24
みらいつくり研究所
まついかい