Works

第1回『しさくの広場』作品No.003

2020.5.31

線路沿いの道を下る
道路わきの街路樹
駅の近く、黄花藤が下る

線路沿いの道を昇る
道路わきの雑草
駅の近く、ルピナスが昇る

キングサリ、ノボリフジ

 

同じ道を戻る

フロントガラスの前を横切る二羽の鴉
側に歩く一羽の鴨
鴉の一羽が一羽の子鴨を咥えている
見つめる親鴨

 

黄花藤は毒をもつ
ルピナスは狼のよう
どちらも美しいが藤ではない
藤の種も毒をもつ

キングサリ、ノボリフジ

 

やがて次の王が来る

 

 


week2「交流週」

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私は在宅生活が始まって散歩をすることが習慣になりました。前半、淡々と見える景色が描かれています。後半で急に「狼のよう」「美しい」などの筆者の主観が描かれます。終着点の「やがて次の王が来る」にはどんな意味が込められているのか知りたいと思いました。

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美しいけど毒を持ってたり、狼のようだったり。害鳥の鴉と益鳥の鴨の厳しい現実。それらを対比で表現している面白い詩だと思いました。「藤の種も毒を持つ」には、どういう意味や思いがあるのかな、と気になります。

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黄花藤の字が読めず、検索してしまいました。ルピナスも雑草も黄花藤も、きっと色鮮やかで、この道を通って、同じ道を通って、、、の情景が、詩を読むだけでは私には想像できませんでした。もっと色彩の表現があると色の対比にもなり、「やがて次の王が来る」の言葉が映えるような気がします。途中のカタカナ分でリズムが生まれ、声に出したくなる作品で、何度も読みました。

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ジブリの世界みたいだと感じました。

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色紙のような色鮮やかな情景が浮かんできました。主人公の激しさ、美意識、毒、の感情と、どこか自分がここにいないような、冷静さが背中合わせになり、何度も入れ替わるような・・・そんなイメージが広がりました。


week3「推敲週」

コメント、有難うございました。「もっと色彩の表現があるとよい」というフィードバック、ほんとですね。象徴詩が好きですが、個人的には色彩の表現とそれによる象徴はぜんぜんできないです(笑)視覚の体験および表現が弱いんでしょうね。
以下、しさくの自己解説。
2020年5月31日、新型コロナウイルスへの対応としての日本全国における社会的な自粛が本格的に解除される前日に書いたものです。
自宅から車で、札幌市手稲区~西区の、JR星置駅~手稲駅~発寒駅という線路沿いの道路を往復する用事がありました。
星置駅から手稲駅にかけては下りになっています。手稲駅近くに、鮮やかな黄色い花がたくさんぶら下がっている街路樹を見つけました。ネットで検索して、「黄花藤(キバナフジ)」という名前の木で、別名「金鎖(キングサリ)」とも呼ばれる木だと知りました。
その後、線路沿いには雑草だけが続くのですが、発寒駅の近くに紫やピンクのルピナスがたくさん咲いていました(むらさき、とか、ももいろ、とかがなんとなく使いづらかったんですよね…)。車に乗っていた母が「あ、ノボリフジ」と言いました。ルピナスの別名です。
調べてみると、キバナフジもノボリフジも「藤」とは違う植物だそうです。日本人って、藤の時期に咲く色味のきれいな花は、みんな「フジ」っていう名前つけたいんだなー、フジ(富士)って日本の象徴だもんなー」と思いながら同じ道を戻っていたら、ルピナスが咲いていたちょうどその場所で突然二羽のカラスが車の前を横切りました。
驚いてブレーキを踏み、カラスが着地した道路脇を見ると、一羽のカモがいました。見つめる視線の先には先程の二羽のカラスが。よく見ると、そのうち一羽が子ガモを咥えていて、「そうだったのか…」と思いました。二羽のカラスは、捕まってしまった我が子を見つめる母のまさにその前で、餌を奪い合っていたのです。さっきまで花の「美」を感じていた場所が、往路はまったく別の光景になりました。
キバナフジは毒を持つんだそうです。ルピナスは、吸肥力がものすごくて「狼」の名前をつけられたとのこと。どちらも見た目は美しいですが、裏の顔があるんだなと思いました。そして、それらが喩えられる「フジ(藤)」も種子には毒があるとのこと。表面の美しさと、中に潜むものとの対比に驚きました。
ところで、「キングサリ」は、「キン・グサリ(金鎖)」の意ですが、「キング・サリ(王・去り)」とも読めます。「ノボリフジ」については、「フジ(富士)」が日本の象徴だとしたら、日本という国が昇るという意味でもとらえることができます。往路では「下って、登る」道路だったこと、それと合わせるように「下る」キングサリと「昇る」ルピナスがあったこと。そこに対比を見い出しました。そして、様々な「美」を見つけて「昇る」ような気持ちだった往路と、自然界における非情な現実を見て「下る」ような気持ちになった復路の間にも。
ちょうどこの日は、翌日から日本全国で外出自粛が解除されるというタイミング。新型コロナウイルスという、国全体を支配した「王」が去り、ここからまた日本という国が昇っていく…。でもきっと、そんな高揚感を打ち消すかのように、第二波、第三波がやがて来る。もしかしたら別の病原体だったり、災害だったり、他の「王」が日本を、さらには世界を支配するときが来るのだろう。
たった30分くらいの時間でしたが、その間に体験したことが、自らの「しさく」につながった貴重な時間でした。