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しさくの広場2024 春 作品No.33_笹原覚

エッセイ「敗北の春」

三月三日はひな祭り。早春の頃合いだ。二十五年前のこの日、私は慣れ親しんだ東京の街から尻尾を巻いて、冬の如き北海道に帰郷した。あの日は私にとっての敗北記念日だ。
東京で大物になろうと心に誓い「二度とこんなど田舎に帰ってくるもんか!」と威勢が良かった少年は、一番なりたくない男に堕して、ベタ雪降りしきる北海道に引き揚げた。
春の気配を感じるたびに、私はあの三月三日を求めてもないのに思い出す。

 

笹原覚