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第1回 みらいつくり哲学学校オンライン 開催報告

2020年5月15日(金)

 

昨日2020年5月14日(木) 13:30~15:00で、第1回となる「みらいつくり哲学学校オンライン」を開催しました。

 

北は北海道から南は島根県まで、全国から15名の方々にご参加頂きました。

 

最初の15分くらいでみらいつくり哲学学校のグラウンドルールについて説明、次の15分で第1回の課題図書の内容についてレジュメを用いて報告しました。その後の1時間は、参加者の皆さんと図書の内容に関する対話を行いました。

 

奇数回は大阪哲学学校編『生きる場からの哲学入門』新泉社, 2019を課題図書としています。第1回は序論の「生きる場からの哲学とは」を扱いました。

 

この書籍では、有名な哲学者による「~哲学」ではなく、「すべての人が哲学者である」という考え方のもと、「すべての生活者が自らの生きる場に根ざして、世界をそして自らを批判的吟味の俎上にのせる知的営み」として哲学を捉えています。

 

そこで重視されている方法とは、古代ギリシアの哲学者ソクラテスの「街場で市民と対話しつつ生活の批判的吟味を行う」というもの。みらいつくり哲学学校では、オンラインという場ではありますが、街の中のどこかに色んな人が集まって対話をする、といった場をつくりたいと思っています。

 

事前にしっかりと課題図書を読み込み、自らの日々の生活にてらして意見を述べる人もいる。時間が無くて課題図書は読めない、でもなんとなくその場にいて対話を聴いていたい。色んな参加のスタイルをOKにしました。

 

「ただ聴いていたい」という人も、通信環境が許せばカメラは「オン」にしてもらいました。その場にいて対話を聴いてるけど、顔は見えないってことあまり無いですもんね。

 

この書籍では「哲学をまなぶ」ことではなく、「哲学する」ことが重視されています。

「哲学する」の前提として、「生活現場と哲学の双方向のつながり」が重要だとして、下記の二つをあげています。

 

1) 哲学するとは、生活を吟味すること

2) 人びと(ピープル)の哲学をつくること

 

「ピープルの哲学」とは、哲学者の花崎皋平さんの表現です。

 

花崎さんは、著書『天と地と人と』の中で、

「哲学的な思考を営む個人は、自己が生きている時と場が提起する現実の諸問題を無視することはできない」

「世界が陥っている危機の構造と原因を認識し、危機の克服に取り組むことを課題の内に含めざるを得ない」

と書いています。

 

まさに今、世界中の人びとが同じ「危機」に陥っているこの状況で、

その「危機の構造と原因を認識」し、「危機の克服に取り組む」ことが求められているのだと思います。

 

今回は、稲生会職員を含む医療・福祉専門職(医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士、公認心理士)はもちろん、教師、保育士、公務員、NGO職員、新聞記者、建築家、そして2018年度よりともに探究を続けている「みらいつくり大学」のリサーチフェロー(障害当事者)も参加してくれました。

 

同じ課題図書を読んでも、専門領域の違いにより、住んでいる地域の違いにより、様々な捉え方が出てきます。

「話されたもの」と「書かれたもの」の違いについて考えた人、「哲学」についてのイメージについて考えた人、他者との協働について考えた人、「自立」について考えた人、訪問看護をする中で出会った患者さんたちの「哲学」について考えた人、子どもたちの遊びにおけるルールづくりについて考えた人、医療のあり方について考えた人、他者と対話することの重要性について考えた人、専門職としての関わり方について考えた人、子どもたちとの「巣ごもり生活」について考えた人、などなど…。

 

対話はもちろん現在の状況についても広がり、新型コロナウイルスのパンデミックは「都市化」と「情報化」にどのような影響を与えるのか、4月の自殺率が下がったこととどのような関連があるのか、これまでの「システム」の転換につながるのか、といった話題にもなりました。

 

印象的だったのは、ある参加者の話。

 

田舎のおじい、おばあは、今年もいつも通り田植えをする。

休校の影響か、若者たちがたくさん手伝いに来る。

最初はマスクをして農作業を手伝っていた若者たちも、自分たちの状況を滑稽に思うようになり、ついにはマスクを外して泥だらけで田植えをする。

 

おばあの言葉。

 

「こんなときは、農民が強い」

 

「強い」の中に、どんな「哲学」が含まれているのでしょうか。

 

普段から、悪天候や災害、疫病などに収穫が左右される。

誰かが困った時のために、普段から連帯しなければ生きていけない。

 

逆に、世界中の人びとの中でウイルスがはびこっても、芽は出て、花は咲き、実をつける。

人類がその動きを止めても、大地はいつもと同じく循環する。

 

そんな「人類の弱さ」と「大地の強さ」を含んだ、「農民の哲学」なのかもしれません。

 

 

今後も、オンラインの「場」を通して対話を続けることで、「いまある危機の構造と原因について認識し、その危機を克服する」ことに加えて、日々の生活において「哲学する」訓練を通して、自分たちなりの「哲学」を紡いでいけたらと思います。

 

次回第2回は「偶数回」ということで、マルティン・ハイデガーの『存在と時間』を扱います。

日時は、5月19日(火) 10:30~12:00です。

偶数回については、扱う課題図書がかなりヘビー(笑)なので、事前に読まなくても大丈夫です。

最初にレジュメを用いて説明した後、1時間ほどで対話をしたいと思います。

 

参加者から「定時制はありませんか?」と質問を頂きました。

緊急事態宣言下で自宅にいる方が多い状況なので平日日中の時間で設定していますが、今後の状況や参加者との相談の上、開講時間や開講頻度の変更も考えたいと思います。

 

ご関心のある方は第1回の録画や資料等を共有しますので、ご連絡ください。

 

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