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作品No.002_しさくの広場2021秋

自由

 

そのひとは自由だった
そのひとは自由の意味を教えてくれた
自由とは、なにも制約がないことではなく、制約によって縛られないこと
自由とは、制約からの自由ではなく、制約があっても自分自身で在り続けること

そのひとは、誰かに会うために、靴下を自分で履けなくてもいいと言った
自立とは、自分ひとりで靴下を履けることではないと
そのひとは自由を阻む場所から飛び出した

愛するひとと一緒にいたかったから、とそのひとは言った
そのひとは気づかいの人だった

間違った気づかいをするひとにも気づかいができる人だった
そのひとを支配しようとするひとにも「今度、家に遊びに来てください」と言える人だった

そのひとの手鏡にはわたしたちは映らない
わたしたちが見る手鏡にはそのひとが映る

そのひとの気づかいは、そのひとではなくわたしたちに向かっていた
そのひとの手鏡にわたしたちが見たものが、自由なのだ

そのひとが去った世界で
わたしたちの手鏡に映るものは
なんだろうか


week2「交流週」

・手鏡には、なにが映るかなぁと考えました。

・「自由」を様々に定義できると思いますが、「自由」に生きることは簡単ではないと思いました。また、「そのひと」は亡くなったのだろうと思います。亡くなった人をおもうことが、作者にとっての「しさく」「表現」にどのような影響を与えるのかと考えることがあります。