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第34回みらいつくり読書会_開催報告

古典を読む。
世界を旅する。
みらいをつくる。

 

第34回みらいつくり読書会を開催しました。

【日時】
2021年9月27日(月)16:00〜17:00
【課題図書】
マーク・トウェイン『ハックルベリィ・フィンの冒険』
【参加者】
6名(うちラジオ参加3名)
【板書記録】

アメリカ文学第4弾はマーク・トウェイン『ハックルベリィフィンの冒険』。
はっきり言って名作でした。

『ハックルベリィ・フィンの冒険』と検索すると、ウィキペディアには、ヘミングウェイが本作に対して残した言葉が書かれています。
あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。…すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。

確かにこの言葉は有名なようで、別な本でも見たことがありました。
私もこの一節を引用しようかなと思いつつ、この記事を書き始めました。

せっかくなので、ひと手間かけて、原文を読んでみようと思い、図書館に行ってヘミングウェイ『アフリカの緑の丘』を借りてきました。
『アフリカの緑の丘』は、ヘミングウェイ全集第6巻にあたります。日本で発行されたのは1966年。埃っぽいページをめくっていくと、例の内容を見つけました。

「あらゆる現代のアメリカ文学は『ハックルベリー・フィン』というマーク・トウェインの一編の作品から出ているのです。お読みになるんなら、黒ん坊のジムが子供たちのもとから盗まれるところでおやめにならないと。そこがほんとうの終わりなのですから。あとはごまかしにすぎません。でもぼくが読んだのではそれがいちばんいい作家です。あらゆるアメリカ文学はあれから出ています。それ以前になにひとつありません。それ以後もまずなにひとつないといっていいでしょう。」ヘミングウェイ『アフリカの緑の丘』p.26

確かに、ウィキペディアに引用された内容が書かれています。
でも気になったのは、引用された部分と部分に挟まれた内容です。
もう一度引用します。
お読みになるんなら、黒ん坊のジムが子供たちのもとから盗まれるところでおやめにならないと。そこがほんとうの終わりなのですから。あとはごまかしにすぎません。
これは私が『ハックルベリィ・フィンの冒険』を読んで抱いた違和感と重なっていました。

私が思うこの作品のハイライトは、第31章です。

売りに出されたジム。この事実を前にハックは良心のせめにあいます。
自分の中にある良心に気がついた時、ハックはこれが神様からの啓示だと感じます。
神様は今までの自分の悪い行いを見ていたんだ、と。

ハックは続けます。
「僕はお祈りをして、今までのような子供ではなく、もっとよい子供になるようにやってみようと思った。」
でもハックは祈ることができません。
その理由もハックはわかっています。
「それは僕の心が正しくないからだ」

そこで、ハックはジムを助けるための手紙を書きます。
するとハックは祈りができるような気持ちになります。
「僕は生れて初めて罪がすっかり洗い浄められたような、すがすがしい気持になり、これでお祈りができると思った。」
しかし、ハックは祈りません。ジムとの友情を思い出していたからです。

「せつない立場だった。僕は紙を取り上げて手に持っていた。僕はぶるぶる震えていた。永久に、二つのうちどちらかに決めねばならず、どちらにするかわかっていたからだ。僕は息をこらし、ちょっとの間考えてから、こう思った。
『よし、それじゃあ僕は地獄へ行こう』ーこう言うと、僕は紙を引き裂いてしまった。」

ハックは、手紙を出してジムを探してもらうことをやめ、つまり、祈って「救われる」ことを選ばず、自分の手でジムを盗み出すことを決意します。

今思い出しても胸が熱くなります。

・・・

次回は少し間を空けて、10月25日16:00〜17:00に行います。
「20世紀のハックルベリィ・フィン」とも言われるサリンジャー『らい麦畑でつかまえて』を扱います。
日本語へは野崎孝と村上春樹が訳をしており、両作品とも白水社から出版されています。

そして次次回は11月8日16:00〜17:00です。フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』を扱います。
次回、次次回と、私は村上春樹訳を読み継ごうと考えています。

みなさんも、秋の夜長に、ぜひ読書にチャレンジしてみませんか。

【事務局】
みらいつくり研究所 松井
(matsui-ka@kjnet.onmicrosoft.com)

*ラジオ参加も大歓迎!
「ちょっと議論には加われない」「その時間は作業しているから」
そんなみなさんにおすすめの「ラジオ参加」。
zoomのカメラをオフにして、ラジオみたいに聞き流す。
そんな「学び」があっていい。そんな「参加」があっていい。
興味のある方はぜひ事務局にお問い合わせください。