はじまりの雨
はじまりは 雨の 静かな放課後
折り畳み傘は カバンに しまった
あとは いっしょに 帰るだけ
すべてがはじまる音がきこえる
ペンネーム:saomidori
交流週
・四行だけの詩ですが、情景だけでなく、その背景にある物語まで浮かび上がってくるような、とても素敵な詩です。最初の三行は、余白が二回ずつ挟まれていて、リズムが抑えられていますが、最後の四行目は余白が無く「すべてがはじまる音がきこえる」と書かれていて、それまで抑えられていたものが一気に爆発する感じが出ています。三行目の「あとは いっしょに 帰るだけ」の「いっしょに」の相手は、折り畳み傘なんでしょうか。それとも「誰か」なんでしょうか。その「誰か」との間の「すべて」が「はじまる」のでしょうか。「すべてがはじまる音」というものがどんな風に「きこえる」のか、とても興味があります。タイトルが「はじまりの雨」なので、「雨」からスタートということなんですね。「雨」が「人生における困難」だと考えれば、もっと大きな意味での物語の「はじまり」なのかも、という風にも考えられそうです。一体、どこに「帰る」のでしょうね。saomidoriさんは、今回が初めての「しさく」でしょうか?すごい才能ですね。次回作も期待します。
・雨が降りはじめた放課後。雨が降っているのに折りたたみ傘はカバンの中。そこにはどのような心境があるのでしょうか。放課後は終わりのイメージがありますが『すべてがはじまる‥』という想像力をかきたてられる終わり方が面白いです。
・雨が降ってるけれど、傘は鞄にしまって、これから一緒にひとつ傘で帰る。短い行数なのに読んでいるうちに、すっと学生時代にタイムスリップしたような、どきどきする感覚になりました。
・「放課後」とあるので、10代の頃の恋愛についてのしさくでしょうか。私自身は漫画でしかこのような恋愛を見たことはないので、色々と想像をしながら読みました。このしさくの主人公も、もしかすると自分の想像の世界に浸っているのかもしれません。雨が降っていて一つの傘を分け合って聞こえる音が「はじまり」に聞こえる、そこにはまさに憧れの恋愛と現実の境目が曖昧な10代の頃の陶酔感のようなものがよく表現されていると思いました。
・ドキドキしますね。そっとかばんにしまってその時間を待つ。すてきな詩ですね。
推敲週
コメントありがとうございます。
余白とリズム、音を感じながら読んでもらえて嬉しいです。
絵のない絵本のように、それぞれの中に情景が浮かんだなら、やった♪という気持ちです。
詩はずっと書いていず、とても久しぶりに書こうと思いました。
そしたら、20年以上前にもらった、おべんと箱の詩が思い出されました。
はじまりのあの日があったから、たくさんの美しい詩を、美しい音楽をもらいました。
たった一言伝えるのに時間も勇気も必要で、でも伝わるって素晴らしい感動でした。
人を好きになることを教えてくれた青春のはじまりへの感謝を込めた4行の詩です。
もっと齢を重ねたいつか、孫やひ孫くらいの人に
青春の話を語れるロマンチストなおばあちゃんになりたいなと思っています。
みなさんの忘れられない詩はありますか?
机のよこにぶらさがって
今はいっぱいなのでしょうか
あなたの手にぶらさがって
今はからっぽなのでしょうか
君がそこにいるものだから
私の手までもからっぽなのよ
そっちのおててに
おいでなさいな
寒くてすべる道だから
まして手をばつないでたいから
だからむこうに
おゆきなさいな
小さなすいとうと
おべんと箱や