「大切なものを失った。
もう、生きていけないと思った。
でも、お腹は空いた。 人間って、そういうもんだ。
食べよう。そして、生きよう。 」
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「みらいつくり食堂」は、2019年4月に移転した医療法人稲生会の新拠点2階にあります。
人工呼吸器などの医療的ケアを必要とする未就学の子どもたちを日中お預かりする「医療型特定短期入所どんぐりの森」のとなりです。
医療法人稲生会の職員食堂ですが、患者さんのご家族や地域の方々もお食事にいらっしゃることがあります。
みらいつくり食堂の厨房の壁は、濃い青色で塗られています。 「死」や「喪失」をイメージした色です。
医療法人稲生会はこれまで、医療的ケアを必要とする子どもたちやそのご家族の「生」を支援するための活動を行ってきました。
しかしながらその中で、たくさんの別れもありました。 お子さんの「死」は、ご家族にとっては「喪失」でもあります。
2018年4月には、「喪失」を抱えたご家族とともに、「グリーフ当事者研究」を開始しました。
「グリーフ」とは、「喪失」などからくる「悲嘆(悲しみ)」のことです。ご家族とともに研究を進める中で何度か出てきたテーマが「食べる」。
「自分の子どもを失って数時間後にお腹が空いて、罪悪感を覚えた」
「家族を失った後の一週間くらいは、何を食べていたのか憶えていない」
「子どもが亡くなってから、もう生きていけないと思った。でも、きちんと食べてたんです。だから今もこうして生きてる」
「死」や「喪失」と「生」をつなぐものとして、「食べる」があるのではないか。
深い悲しみの中にあっても「食べる」。そこに人間の本質があるのではないか。
食べる。そして、生きる。
そこから新たな「みらい」が生まれるのではないか。 そんな思いで、「みらいつくり食堂」をつくりました。(2019年4月23日)