自由
そのひとは自由だった
そのひとは自由の意味を教えてくれた
自由とは、なにも制約がないことではなく、制約によって縛られないこと
自由とは、制約からの自由ではなく、制約があっても自分自身で在り続けること
そのひとは、誰かに会うために、靴下を自分で履けなくてもいいと言った
自立とは、自分ひとりで靴下を履けることではないと
そのひとは自由を阻む場所から飛び出した
愛するひとと一緒にいたかったから、とそのひとは言った
そのひとは気づかいの人だった
間違った気づかいをするひとにも気づかいができる人だった
そのひとを支配しようとするひとにも「今度、家に遊びに来てください」と言える人だった
そのひとの手鏡にはわたしたちは映らない
わたしたちが見る手鏡にはそのひとが映る
そのひとの気づかいは、そのひとではなくわたしたちに向かっていた
そのひとの手鏡にわたしたちが見たものが、自由なのだ
そのひとが去った世界で
わたしたちの手鏡に映るものは
なんだろうか
week2「交流週」
・手鏡には、なにが映るかなぁと考えました。
・「自由」を様々に定義できると思いますが、「自由」に生きることは簡単ではないと思いました。また、「そのひと」は亡くなったのだろうと思います。亡くなった人をおもうことが、作者にとっての「しさく」「表現」にどのような影響を与えるのかと考えることがあります。
week3「推敲週」